エルダー2022年8月号
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の低下」は今後さらに深刻さを増していきますし、そのなかで今後「高齢者の高齢化」が進み、特に85歳以上の高齢者が急増していきます※5。当該層は独居者も多く、また認知症を患う人も多く含まれるでしょう。福祉の力(マンパワー)にも限界があるなかで、そうした高齢者をだれが支えていくのか、社会としても大きな課題です。パターンCの65歳以降の就労の場は、こうした地域が抱える課題の解決に貢献できる場が理想的です(このことに関連深い厚生労働省の政策として、「生涯現役促進地域連携事業※6」および「生涯現役地域づくり環境整備事業」がありますが、本稿での言及は割愛します)。もう一つ強調したいことは、「生涯“貢献”」という考え方です。「生涯現役」は基本的に「就労」を前提に生涯を通じた活躍を期待するものととらえられますが、「生涯貢献」は就労にかぎらないさまざまな「貢献」のあり方を、生涯を通じて継続していくことを期待するものです。先ほど体力的な若返りのことを述べましたが、そうはいえども年を重ねていけば、いつかは体力面や健康上の理由などから就労が困難になってしまうでしょう。しかし、就労していないからその人が社会のために役立っていないかといえば、決してそのようなことはありません。例えば、80代の方が子ども世帯の家事をサポートしたり、孫の面倒をみたり、友人の話し相手になったり(互助的貢献)、自分の存在がメンターとして他人に安心感を与えたり(精神的貢献)、積極的に消費することや寄付行為を行うこと(経済的貢献)など、貢献の仕方にはさまざまなことがあります。人のため、社会のために自分が貢献できていると実感できることは、本人の生きがいにもつながります。パターンCの65歳以降においては、こうした「貢献」という意識を持って暮らしていくことも必要であり重要と考えます。なお、こうした考えを反映した「貢献寿命」という概念があります※7。今後社会に広く浸透していくことが期待されます。以上のパターンCのモデルを一人でも多くの人(高齢者)が実践できれば、それは地域力の強化、人手不足解消、本人の健康面への寄与など多面的な効果が期待されますし、そのことこそSDGsへの貢献につながることだと思います。今後、パターンCモデルを歩める人(高齢者)を増やしていくには、まずもって社会の側(地域や企業等)が、高齢者の活躍や貢献を“期待する”ことが必要です。そうした場・機会(選択肢)をいかに増やしていけるか、そして、高齢者を導いていけるか(マッチングシステムなど)が、今後の日本の未来に、そしてSDGsの達成のために重要だと考えています。※5 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計人口では、85歳以上人口は2020年の約620万人から2035年には1000万人を越える見通し※6 「生涯現役促進地域連携事業」の事例を64頁で紹介※7 「貢献寿命」については、筆者を含む研究メンバーにて、長寿科学振興財団「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援プロジェクト(貢献寿命延伸への挑戦~高齢者が活躍するスマートコミュニティの社会実装)」のなかで概念化と普及活動を進めている※筆者作成2022.814図表3 パターンCモデルのイメージと効果人生100年時代20歳地域(社会)企業個人50歳地域で普通のシニアが活躍・貢献し続ける!(特に地域課題解決に)65歳75歳年金・貯蓄・保険等(経済基盤)地域における生きがい就労地域における生きがい就労85歳貢献活動の推進100歳地域力の強化、地域経済活性化、地域財政の好転人手不足解消、シニアを活かした経営強化フレイル・認知症予防、資産寿命・貢献寿命の延伸生計就労

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