エルダー2022年8月号
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エイジズムの排除が重要な役割を果たすを受け、産業ジェロントロジーの理念に基づいた、シニアの働きやすい職場環境づくりを追求している。ジェロントロジーを学び、日本産業ジェロントロジー協会認定インストラクターの認定を受けている洞専務取締役は、ジェロントロジーについて次のように説明する。「ジェロントロジーは、加齢による人間の変化を、心理、教育、医学、経済、労働、栄養、工学など、さまざまな分野から学際的に研究する学問です。例えば、私たちには、過去の知識や経験を活かす『結晶性能力』と、新しいことを覚える『流動性能力』という二つの能力があります。後者は加齢によって衰えていきますが、『結晶性能力』は一生伸びる人もいるといわれています。こうした理論に基づいて、シニアの働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます」シニアが働きやすい職場環境づくりの取組みを、同社では「エイジフレンドリーワークプレイス」と名づけて、シニア人材を採用するための求人広告から見直しを行い、労働環境についても多様な改革を実践している。例えば、産業ジェロントロジーの視点からもっとも生産効率の上がるチームの年齢構成を研究し、若手9に対しシニア人材1の編成が最良という結果を受けて、実際の棚卸業務のチーム編成に採用している。また作業においては、棚の上段と下段は若手、中段をシニア人材が担当するという役割分担も考案。さらに、軽量の脚立を導入したり、通常3時間ごとの休憩をシニアは1・5〜2時間ごとにこまめに取ったりするなど、研究の成果を活かした工夫を随所に取り入れている。こうした若手とシニア人材との協働において重要になるのが、「若手とシニア人材が良好な関係を築き、チームでしっかり仕事ができるか」ということだ。そこで、SDGsの取組み目標にも掲げている「エイジズムの排除」が重要な役割を果たしているという。同社では、アルバイトを含む全従業員に対し、産業ジェロントロジーの教育機会をつくり、エイジズムの排除について伝えている。「若い人のほとんどが『エイジズム』という言葉もその意味も知りません。まずは知ってもらうことが大事だと考えています。加齢により低下する能力もあれば伸びる能力もあると学んでもらうことで、シニア人材に対する理解が深まり、一緒に働く際の役割分担の意味についても理解することができます。知らないままでは、チームがうまくいきません。一方、シニア人材の視点で考えると、若手が多いチームに入ることに不安を感じる人もいますので、シニア人材に対する研修では、加齢による能力の変化などについて話をすることで、不安を取り除いて仕事に臨めるようにしています」(洞専務取締役)パートを採用し、エイジズムの排除を含む現場研修を行っている。によるフォローも行い、心理的な不安や現場でのけがの防止につなげている。加えて、全従業員を対象に株式会社リクルートが提供している「からだ測定※」を実施し、「しごと体力」、「し2021年度は、約3000人のアルバイト・また、シニア人材には、シニア専属トレーナー※ からだ測定……体力や処理能力などを診断するためのツールアルバイト社員のためのエイジズム排除に向けた研修の様子17

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