エルダー2022年8月号
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新たな集出荷システムを考案し高齢社員を季節限定雇用から通年雇用にかいきの 高齢社員が多い職場だからこその取組みといえる。また、社員が働きやすい職場づくりの取組みとして、農地で作業をする社員を対象とするサマータイム制度を20年以上前から導入している。通常は8時から17時の勤務だが、炎天下での作業を避けるため、早朝5時から昼12時までのサマータイムを設定。作業自体は11時までに終わらせることを徹底するとともに、熱中症対策のため、凍らせた水やスポーツドリンクの携帯を必須とするなど、最大限の注意を払い、体調管理を行っている。お昼に仕事が終わるため、就業後は、涼しい自宅でゆっくり休養するなど、各自が翌日の仕事に備えて英気を養う。こうした独自の取組みが働きやすさにもつながり、体調とともに、モチベーションの維持にもつながっているそうだ。なお、毎年のサマータイムの開始時期は、現場を熟知する農産部部長の一声で決まるという。そのほか、同社では福利厚生が充実しており、社員からの評判も高い。例えば、昼食は会社で弁当を注文することができ、会社が一日一食あたり300円を負担。基本となる500円の弁当ならば自己負担が200円に抑えられることから、若手から高齢社員まで、年代を問わず歓迎されている制度である。家事をになうパートタイムの高齢女性社員たちからは、「朝からお弁当づくりをしなくてすむので助かっている」という声が聞こえてくるそうだ。こうした高齢者雇用の取組みが評価され、同社は2015年度高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰特別賞を受賞している。松尾社長はこれまで、地域の発展を目ざし、地場産業である農業を持続可能なものにしようと、さまざまな取組みを行ってきた。根底には「地域の人々を誰一人取り残したくない」という、SDGsのスローガンにも通じる松尾社長の思いがあったという。その取組みの一つが、季節限定で働いていた高齢のパートタイム社員の通年雇用化だ。同社の主力商品であるジャガイモの産地といえば、北海道が有名で168万6000tと全体の79%を占めており、次いで鹿児島県7万9200t(同4%)、長崎県が6万8100t(3%)と九州勢が続く(「農林水産統計」令和3年産春植えばれいしょの都道府県別収穫量より)。ちなみに、2017年まで生産量2位は長崎県だったそうだ。長崎県は、1600年ころにジャガイモが初めて日本にもたらされた土地であり、松尾青果が所在する南島原市はその一大産地である。一般的に、ジャガイモは春に作づけし、夏から秋に収穫を迎えるが、長崎県と鹿児島県はその温暖な気候から春と秋の2回、収穫を行っている。よって、端は境ざ期きにあたる春先に市場に出回っているジャガイモは、秋に作づけされた九州産ということになる。と、12~1月。そのため、かつて同社では、繁忙期である年2回の出荷時期に、地域の高齢者をパートタイム社員として一時的に雇用していたという。しかし、地域で働く人たちの生活の安定、ひいては地域の安定・発展のためにも、パートタイム社員の通年雇用が必要だが、地元には農業以外に目立った産業がない。そこで、松尾社長が注目したのが、日本各地のジャガイモの収穫時期の違いだ。は、鹿児島県本土よりさらに暖かく、冬がジャガイモの生育期間にあたり、出荷時期は2~4月となる。逆に、気温の低い北海道での収穫時期は8~11月。つまり、時期をずらして日本を縦断するように集出荷を行うことで、1年を通じて仕事を生み出すことができる。長崎県内のジャガイモの出荷時期は4~6月例えば、鹿児島県の南に位置する沖お永え良ら部ぶ島20

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