エルダー2022年8月号
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地元の兼業農家を代行事業で支援し次世代に残すべき農地を守る年齢、性別、国籍の垣根なく多様な人材に“働きがい”を提供これを実現するため、松尾社長は鹿児島県沖永良部島と北海道広尾郡に関連会社を設立。こうして鹿児島県の沖永良部島から北海道までをつなぐ「青果の全国リレー集出荷」を実現し、日本全国で収穫した旬のジャガイモを途切れることなく、年間を通して安定的に流通することが可能となった。これにより、同社で働く高齢のパートタイム社員の通年雇用を実現し、現在は西日本の市場をメインに年間1万2000tを出荷している。地域高齢者の通年雇用と同時に松尾社長が推進したのが、地域の農業を守るための取組みだ。1995年にジャガイモ、レタス、キャベツなどの作づけ・収穫の代行支援を手がける子会社として農業生産法人「有限会社ぽてとの里」を立ち上げた。地元にある個人農家の依頼を受けて作づけ・収穫を請け負うこの事業は、高齢者雇用の受け皿になると同時に、地域農業の維持にもつながっている。「南島原の周辺地域は、多くの農家が後継者不足や働き手の不足、にない手の高齢化により重労働ができず、農地管理が困難になっていました。地元の一般兼業農家の依頼を受け、当社に所属する高齢社員をリーダーとしたチームが依頼者の畑に出向き、作づけや収穫作業を代行することで、農家支援を行っています。農家支援が一段落すれば、社員は社内の農作業や、工場内の選果・選別作業にあたります」(松尾社長)農作業の代行を依頼する農家は、「いつもなら10日はかかる作業が1~2日で完了するので、とても助かります」と話し、喜ばれているそうだ。長崎県におけるジャガイモの生産量は2010年から2020(令和2)年の10年間で約農家の後継者不足・働き手の不足により、農業の規模が縮小していくなかで、高齢社員も活躍している同社の農作業代行事業は、地域雇用の受け皿になっている。同時に、将来の世代に残していきたい貴重な資源である農地を守ることにつながっている重要な事業となっている。や障害者などの多様な人材の活用にも取り組んでいる。2013年から技能実習生を受け入れており、現在はベトナムとカンボジア出身の7人が農作業に従事している。全員女性で、仕事に対して真面目で技能の習得も、日本語の上達も早い。覚えた作業を手際よく進めることができるそうだ。3年間の実習後は、さらに実習を延長する人、社員として入社する人、なかには同社の社員と結婚して日本に残った人もいるそうだ。実習後の進路からは、働く環境のよさが伝わってくる。まは3人が選果などの作業にあたっている。「みなさん、びっくりするほど真面目にコツコツと仕事をしてくれます。シンプルな作業が向いているので、同じ仕事をずっと担当してもらうことが大切です。彼らは状況変化にはとても敏感なところがあり、例えばジャガイモを選別するカゴの配置を変えただけでも、あわててしまったり、気分を害してしまうこともあります。こうしたとき厳しく指導するのではなく、指導す松尾青果では、高齢者だけではなく、外国人障害者の受け入れも積極的に行っており、い松尾博明代表取締役社長2120%、作付面積が約18%減少しているという。

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