エルダー2022年8月号
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農家収入の安定化を図り地域農業の持続化に貢献するる高齢社員は彼らの特徴をふまえて気長に接し、じっくり教えることができます。指導する側に必要な資質が、高齢社員にはあると思います」(松尾社長)高齢社員の温厚さは、若手との円滑なコミュニケーションにも活かされている。農産部の主任は25歳と若く、社内若手の出世頭。農業は天気動向を読んでどう対処するかがカギとなるが、この主任は天気の情報を収集し、要領よく作業を進めることができる。この能力を買って、農産部部長の補佐役として役職(主任)に抜擢された。部長が不在の際は、代理を務め現場をまとめている。部長と主任は、約40歳の年齢差がありながら、コンビ関係は良好で、ときには冗談をいいあい、周囲の人たちを含め、場を和ませる場面もあるそうだ。多様な人材を受け入れている松尾青果は、社員がそれぞれ持てる能力を発揮し、働くことに満足を感じる働き方を提供している。その根底には松尾社長がことあるごとに口にする「朝は希望に目覚め、昼は努力に生き、夜は感謝と反省に眠る」という経営理念がある。「朝は今日行う仕事を考えて前向きな気持ちを胸に、仕事中は精一杯努力します。1日を終えた後、人への感謝だけですませず、ここがダメだった、あれもダメだった、と仕事のうえで成長するためには自らの行いを反省しなければなりません。若手には人としても成長してほしいですから、仕事での厳しさは必要だと思います」と、特に若手に対して、やりがいを持って働いてもらうための指導方針を述べた。同社の商品である農作物は、台風や水不足、猛暑などによって収穫量が大きく変わり、常に価格が変動している。農業・農家が持続的に成長していくためには、この流動的な価格設定を変えることが必要ではないかと、松尾社長は話す。「当社はレタスを11~3月までの4カ月間、カット野菜にするために契約した固定価格で仕入れており、レタス栽培をしている農家もこれを歓迎してくれています。近年はレタスの取扱い量が増えており、もっと増やしたいという農家もあります。レタスにかぎらず、野菜の売買を契約価格にして相場を固定すれば、農家は売上げを立てやすくなり、家業は安定します。これもSDGsにつながるのではないでしょうか」農家を守りたいという松尾社長の思いが、農業ビジネスを持続化可能なものに変えようとしている。地域の高齢化に向き合って新しい農業ビジネスを生み出し、地域農業の持続化に貢献してきた松尾青果。気負いなくごく自然に、あたり前のこととして多様性のある人たちを雇用し、自然とダイバーシティ経営を実践して地域発展の原動力としてきた。松尾社長は「私たち松尾青果の社員は常に自然と接していて、自然の恵みをお客さまにお届けし、喜んでもらうことを生業としています」と語る。今後も農家の視点を持つ青果卸業として、地元農家の所得向上を支える取組みを進め、新しい農業振興のモデルづくりを目ざしていく。技能実習生を指導しながら一緒に仕事をする高齢社員22

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