エルダー2022年8月号
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第2回年金がもらえるまでは働き続けたいと考える高齢者が増えています。今後、年金支給開始年齢は65歳となりますが、60歳定年制の企業で65歳以上への定年引上げや定年廃止が実現すれば、高齢者は安心して働き続けることができ、企業にとっては少子高齢化時代の労働力の安定確保につながります。もっとも、さまざまな事情から定年引上げがむずかしく、当面は60歳定年をそのままに継続雇用・再雇用で対処したいと考える企業も存在します。では、定年後の継続雇用制度はいかにあるべきでしょうか。現状の継続雇用制度は“問題なし”とはいえないようです。多くの高齢社員にとっての継続雇用のイメージは「定年前と仕事も責任も変わらない」、「給料がガクンと下がる」、「人事考課がないのでがんばってもがんばらなくても給料は同じ」というものではないでしょうか。もちろん会社のいい分もあります。「定年退職者は正社員と処遇が違う」、「役職を離れて責任は軽い」、「基本的に残業はない」などですが、会社の説明不足によって高齢社員の納得が得られないままですれ違いが生じ、意欲の低下した高齢社員の仕事ぶりが職場の若手や中堅社員に悪影響を及ぼしているかもしれません。会社は一人ひとりの高齢社員が希望する仕事(いままでと変わらぬ仕事か負担の軽い仕事か)や希望する働き方(フルタイムかパートタイムか)を聴く一方、会社として取り組んでほしいこと(営業の第一線での業務、後継者育成やマニュアル整備など後方から支える業務など)も伝え、両者の意向のすり合わせに努めるべきです。そして役割や負担の重さを反映した賃金制度をつくり、再雇用であっても人事考課を行って達成度を評価し、賃金や賞与など金銭的報酬だけではなく肩書や表彰などの心理的報酬も与えて処遇することが高齢社員のやる気につながります。29エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。プロフィール解 説解 説解 説解 説マンガで学ぶ高齢者雇用集中連載 高齢者雇用を推進するうえで避けては通れないのが、高齢社員のモチベーションの問題です。高齢社員のモチベーションの低下にはさまざまな要因が考えられます。賃金や処遇への不満もあれば、定年後の継続雇用による仕事内容や役割の変化への不満などもあるでしょう。不満がつのれば、今回マンガに登場した犬尾商事の高齢社員・芝さんのように、仕事をいい加減にするような社員が出てくるかもしれません。高齢社員のモチベーション向上のポイントについて、東京学芸大学の内田教授に解説していただきました。内田教授に聞く高齢者雇用のポイント高齢社員のモチベーションが低くて困っています高齢社員の意欲の低下は若手・中堅社員にも悪影響適切な評価・処遇制度とともに、心理的報酬で高齢社員のやる気をアップ教えてエルダ先生! こんなときどうする?

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