エルダー2022年8月号
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るといえます。この点、周囲に参考にできる情報が豊富にあればよいのですが、各社ともまだ取組みを開始した段階であることから、実際にはマイルストーンにできるものがほとんどありません。このように手探りで行う必要のあるテーマであることから、とにもかくにも、まずは自社の実態調査からスタートすべきであると筆者は考えます。具体的な進め方として、三つの分析手法をご紹介します。これにより、「高齢社員を取り巻く自社の課題」を総合的かつ多面的に整理することができるようになりますし、少なくとも「何からやればよいのかわからない」という状態は脱することができるでしょう※。①人員分析人員分析とは、将来的に高齢社員の人員ボリュームがどう変化するか、そのことにより組織でどんな問題が起こる可能性があるのかを推察するなかで、高齢社員の活躍に向けた課題抽出を行う方法です。例えば、一般的な企業の人員構成として、①30代半ばから後半の層が少なく、②40代半ばから50代前半の層が多い、という類型があげられます。筆者はこの類型を「中抜け型組織」と定義しています。そのほかに、中間層が多い「中太り型」、文字通り高齢化の進度が早い「高齢化型」という類型もあります(図表1)。厚く安定的な組織構成が行われやすいという見方もできますが、将来的に大量のシニア層を抱えるリスクがあるととらえる視点も重要です。例えば、中抜け型組織で高齢社員の活躍を促進する際、高齢社員に求める役割を「現役の継続」とするか、逆に現役は退いてもらい、「権限移譲、後進育成の強化」をになってもらうことにするかによって、取組みのスタンスが大きく変わることがあります。間に合わない可能性が高ければ、高齢社員に「プレイヤー」として隙間期間を埋めてもらうことへの期待は高く、現役期間を続行してもらうために定年延長を行う方針が優先順位として高くなるケースもあります。②賃金・人件費分析もなう総額人件費の上昇を抑制しつつ、高齢社員の個別賃金の最適化を図ることを目的として、外部の統計データと社内の実態を照らし合わせて課題抽出を行う方法です。員分析と同時に行います。具体的には、5年、中抜け型組織の特徴について、ベテラン層が前者の場合、幹部候補となる中間層の成長が賃金・人件費分析とは、組織の高年齢化にとまず、総額人件費の分析については前述の人※ 現状分析の手法についてさらに詳しく知りたい方は、『エルダー』2021年2月号特集の解説「70歳までの雇用延長のポイント」、または拙著『人手不足を円満解決 現状分析から始めるシニア再雇用・定年延長』(第一法規)を参考にしてださい37図表1 企業における典型的な組織人員構成(主要3類型)10年といった中長期の人員予測に合わせて、一中抜け型「中間層が少ない」中太り型「中間層が多い」高齢化型「高年齢者が多い」(人数)202530354045505560※新経営サービス人事戦略研究所作成(人数)202530354045505560(年齢)(人数)(年齢)202530354045505560(年齢)生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント

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