エルダー2022年8月号
4/68

大野リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットという二人の学者が書いた『という本が2016(平成28)年に日本で翻訳出版され、ベストセラーとなりました。原題は『The 100Year Lifトという言葉は、実はタイトルにも本文にも使われていません。日本語版を出すときに出版社が考え出した造語です。そのためか、この言葉は人によって異なる意味合いで用いられています。ライフシフトを、転職や起業をすることと同じ意味で使う人もいますが、私はそのような外形的な変化がライフシフトに不可欠な要素だとは考えていません。「自分が人生の主人公として、自ら選択して生き方の抜本的な変化を起こすこと」。私はそのような意味で、ライフシフトという言葉を使っています。大野 す。これまで私たちは人生を教育・仕事・引     -I退の3ステージでとらえてきました。はじめの20〜25年は教育のステージ、次の40年は仕事のステージ、そしてその後は引退のステージです。特に日本の雇用システムは、新卒採用と定年退職で区切られた、絵に描いたような3ステージのモデルです。学校を出たら、仕事中心の人生を送り、定年まで勤め上げるのが理想の人生とされ、そこから外れた人生は選択しづらい窮屈なものでした。しかし、かつては10〜15年程度だった引退後のステージが、いまは健康寿命の延伸とともに延びており、とても3ステージでは持ちこたえることができなくなりました。こうしたなかで、引退後の人生が10〜15年という時代に設計された公的年金制度が見直しを迫られるなど、まず社会の仕組みが変化を余儀なくされました。個人としても、若いころに20年程度受けた教育だけで、その後の教育・仕事・引退の3ステージから人生をマルチステージで過ごす時代へLIFE SHFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)e』で、ライフシフまさに人生100年の時代だからで長い職業人生や定年後の人生をやり過ごせるはずがありません。どこかで何度か学び直しの時間を持たなければ、長い人生を持ちこたえられないのです。 「これまでも仕事を通じて学ぶ機会はあった」という方もいるかもしれません。たしかに日本企業は、配置転換や出向など、さまざまな仕事を経験させることで、人材育成を行ってきました。しかし、これほど変化のスピードが速くなると、企業のなかだけ、あるいは企業グループのなかだけで人を動かしてゼネラリストを育てるような育成では、とても変化に対応しきれないのです。新卒採用した人材を定年まで囲い込むような、3ステージを前提とした雇用・人材育成のやり方では、会社も保たなくなってきています。テージモデルから、柔軟に就職・転職・学び直しなどへの行き来がしやすい「マルチステージモデル」への転換です。ライフシフトは、個人の生き方への問いかけであると同時に、社会のあり方、企業や雇用システムのあり方への問題提起なのです。これから必要になるのは、硬直的な3ス―「ライフシフト」とはどんな意味でしょうか。―なぜいま、それが重要なのでしょうか。め、個人にはどんな心構えが求められますか。―ライフシフトについて考え、実践するた2022.82ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO大野誠一さん

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る