エルダー2022年8月号
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退職勧奨については、労働者の自由な意思により決定させる必要があるため、それを阻害するような場合には、違法となり、賠償責任を負うことがあります。また、退職勧奨における理由を述べる際の発言によっては、パワーハラスメントとして違法となる場合もあります。Q2退職勧奨について契約書の作成がなされていないことに着目しておいてもらいたいところです。労働契約法第19条の適用の前提として、契約書の作成がなされていなかったり、作成されていたとしても形式的に作成したにすぎず内容に関する説明や更新にあたっての面談または説明などが行われていない場合には、有1勤務成績が不良である場合や、懲戒事由の改善傾向が見受けられない場合などには、普通解雇や懲戒解雇といった一方的な処分を行う以外に、退職勧奨により、労使間の合意形成に期労働契約が期間満了により当然に終了するとはいえないことが多いでしょう。そのことは、嘱託社員の場合であっても変わりはありませんので、定年後の有期雇用の取扱いについて、更新手続きや更新するにあたっての考慮要素などが形骸化していないか、いま一度確認しておくことも重要と思われます。より退職という結論を目ざす方法があります。法的にいえば、労働契約の合意解約に向けた協議ということができることから、退職勧奨を行うにあたっては、懲戒事由などの理由は必ずしも必要ではありません。とはいえ、退職勧奨を行うこと自体が、労使間のコミュニケーションによって行われることが当然の前提であることから、使用者から退職を打ち出すにあたっては、何らかの理由がなければ、納得してもらうことはできませんので、退職をうながす理由を準備されていることが通常でしょう。理由の限定がないという点であり、その結果、使用者から、早期退職をうながすために退職金の上乗せなどの好条件と合わせて提示する場合もあれば、懲戒事由に相当するような理由をふまえて退職を迫るといった場面など、使用者がいかなる振る舞いをするかについても幅広いものがあるということです。2退けた協議ということから、その理由は制限されていませんが、その方法が不適切な場合には、退職勧奨行為自体が違法と評価される場合があります。校事件)において是認された内容は、まず退職勧奨のための出社命令に関しては、「退職勧奨のために出頭を命ずるなどの職務命令を発することは許されないのであつて、仮にそのような職務命令がなされても、被用者においてこれに従う義務がない」とされており、これを拒絶したことをもって不利益な取扱いここでのポイントは、退職勧奨の開始には、職勧奨自体が、労働契約の合意解約に向最高裁昭和55年7月10日判決(下関商業高退職勧奨を行う際の注意点について教えてほしい退職勧奨の限界について業務において不適切な言動を顧客に対して行うなど、業務態度が不良な従業員に対して、退職をうながしたいと考えています。退職勧奨を行う際の注意点を教えてください。また、退職勧奨とパワーハラスメントの関係についても教えてください。2022.842A

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