エルダー2022年8月号
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■■■ ■■■■■第5回制度紹介だけでなく「気持ちに寄り添う」ガイドブック佳■さんと、ご自身もキャンスターズのメンバーサッポロビール株式会社の始まりは、1876(明治9)年に札幌で開業した「開拓使麦酒醸造所」にまで遡■る。以来、創業時の「開拓者精神」のままにさまざまな事業への進出を行う一方、近年は働き方改革や健康経営など、社員の健康と安全を守る取組みにも力を入れてきた。なかでも独自に作成した「治療と就労の両立支援ガイドブック」は、主にがんなどの病気の診断を受けた社員とその上司に向け、同社の支援制度や留意点をまとめたもので、「がんアライ部」※1が2021(令和3)年に発表したガイドブックのモデルとなる一方、2022年には、がん当事者の集まりであるキャンスターズ※2の意見を反映して改訂版を作成。より使いやすいものへとバージョンアップしている。そこで、このハンドブックの作成を推進してきた人事部健康管理センターの保健師・吾■妻■美■である人事部の村■本■高■史■さんに、同社の両立支援策についてお話をうかがった。同社が両立支援ガイドブックの作成に着手したのは2017(平成29)年。健康保険組合のデータを調査したところ、がんの検査・治療をしている人が予想以上に多いことが判明したことがきっかけだ。そこで、まずはできるところから対応しようと吾妻さんが提案したのがこのガイドブックだった。「それまでにも、スーパーフレックスタイム制や年次有給休暇の積立制度などを導入していたのですが、いざ病気になったときにどういう支援策があるのか、どう行動すればよいのかについての情報は整理されていませんでした。また、病気になって不安なときに自分に合った制度を探すのはとてもハードルが高いと考えました」と吾妻さん。そこで、支援の必要が出たときにどのようにすればよいかをまとめたガイドブックをつくろうと動き始めたのだ。他社のガイドブックなども参考にしながら、同じ人事部でがんサバイバーでもある村本さんにも相談し、たたき台をみせると「まずは気遣いの言葉から入った方がよいのではないか」、「会社を休むことだけを前提にせず、治療しながら仕事を続けるときのことも紹介したほうがよい」などのアドバイスがあった。「最初は制度情報をまとめようという観点でつくったので、堅苦しくなっていました」と吾妻さんはふり返る。その後社外で「がんアライ部」が発足したのを契機に、同社も「がんアライ宣言」を行い、※1 がんアライ部……がんと就労問題に取り組む民間プロジェクト※2  Can Stars(キャンスターズ)……がん経験者とその家族・遺族で構成されたサッポロビール株式会社の社内コミュニティ2022.844 加齢により疾病リスクが高まる一方、近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病が「長くつき合う病気」に変化しつつあり、治療をしながら働ける環境の整備も進んでいます。本連載では、治療と仕事の両立を支える企業の両立支援の取組みと支援を受けた本人の経験談を紹介します。サッポロビール株式会社両立支援の経験者で社内コミュニティを組織当事者の視点を両立支援ガイドブックに大きく反映病気とともに働く

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