エルダー2022年8月号
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社外取締役は自社にとって利害関係のない役員社外取締役の役割は監督と助言今回は、社外取締役について取り上げます。この用語自体は、本連載の第16回(2021〈令和3〉年9月号)※1で触れていますが、本稿でより深く解説していきたいと思います。社外取締役は、読んで字の通りで社外から選任した取締役のことをさします。この「社外」が何をさすかについては、会社法※2第二条で定められています。就任の10年前から現在まで当該株式会社または子会社の業務執行取締役等でないこと、親会社等の取締役等や使用人ではないこと、兄弟会社の業務執行取締役等ではないこと、当該会社の取締役等の配偶者または二親等以内の親族でないことなどです。加えて、証券取引所の定める独立性基準を満たす社外取締役(一般株主と利益相反が生じる恐れのない者)は、独立社外取締役と呼ばれます。いきなりむずかしい用語が並びましたが、ここでは「社外」の要件は厳格で、当該会社とは可能なかぎり利害関係がない社外の人材から選任した取締役であることを押さえておけばよいと思います。それでは、なぜ利害関係がない取締役の存在が必要なのでしょうか。日本においては、1990年代までの多くの企業では、会社の業務執行に関する決議を行う取締役会が社内から昇格してきた社員中心で占められており、企業経営における監視機能がなく、不祥事や経営者の誤った判断を招いた事例が多発したことが背景にあります。従業員時代の上司・部下の関係を維持したまま役員に登用されるため、社長が客観的には誤った判断や行為をしていたとしても、ほかの取締役は指摘しづらい一方で、そのような関係性がない取締役がいれば諌■止■することが期待できるからです。に関する実務指針」(令和2年7月)にも「社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である」と記載されています。その役割の中核として、経営陣(特に、社長・CEO※3)の評価や指名・再任・報酬の決定をあげており、必要な場合には社長・CEOの交代を主導するよう求めています。このため、取締役や社長の選任や役員報酬の金額は〝身内でお手盛りで決める〟が一般的でしたが、近年は取締役の選任や解任を審議し候補者を決定する指名委員会や、役員報酬のルールを決定し、役員個人別の報酬額および決定に至るプロセスの妥当性を検証する報経済産業省がまとめた「社外取締役の在り方※1  当機構ホームページでご覧になれます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/202109.html※2 会社法…… 会社の設立や運営について定めた法律。2006年施行※3 CEO…… 最高経営責任者■2022.846株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。第27回「社外取締役」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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