エルダー2022年8月号
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大野人生の時間が長くなったからといって、ただ3ステージのうちの「仕事」の期間を引き延ばせばよいというわけではありません。社会や企業に変化が求められているのと同様に、個人としてもマインドの切り換えが必要です。まずは、「自分が大事だと思っていること    3は何か」、「自分が本当にやりたいことは何か」、「幸せだと思える状態を実現するには何が大切か」、それを自問し、自覚する。私はこれを「自分の価値軸に気づく」と表現しています。自分の「価値軸」に気づきやりたいことを実行しようこれは、自分を知る、自分と出会うプロセスです。これまでの経験を棚卸しするなかから見い出せるかもしれません。一方で、ふり返るのは仕事のキャリアだけではありません。子ども時代も含めて、自分がどんなときに幸せを感じるのか、活き活きと輝いていたのは、どんなときだったのかを思い起こすことも大切です。その問いに対する答えは、過去にだけあるのではなく、実際に何かを始めることで気づくこともあるでしょう。自分がどのような志向や特性を持っているのかを自覚しにくいのは、多くの人が会社の意向や指示を受けて働くというかぎられた経験しかしていないからでもあります。自分の価値軸を見い出して、自分がやりたいことを自分で決めて自分で実行すると、それまでは表に出ていなかった自分が引き出されるのです。大切なのは、自分の思いとは関係のない価値に無理やり自分を当てはめようとしないこと。例えば、新しい仕事に挑戦する理由が、「成長しそうだから」、「儲かりそうだから」というだけで、自分の価値軸から離れていると、うまくいかないことが多いのです。大野 「60代や70代になってからでは間に合わない」ということはまったくありません。何歳であってもライフシフトは可能だと思います。でも、20代、30代の人に「何歳まで働くつもりか」と聞くと、多くの人が「定年まで」と答えます。他方で、定年間近の人や、すでに定年を過ぎた人に同じ質問をすると、「働けるうちは何歳まででも働きたい」と答えます。それが実態ですから、やはり若いうちからライフシフトへのマインドを持って、早めに備えておくことが望ましいと考えます。大野 「時間軸」と「空間軸」で考えること齢はありますか。―ライフシフトを始めるのにふさわしい年―価値軸に気づくための秘訣はありますか。エルダー

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