エルダー2022年8月号
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(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博)今後増えるのはプロジェクト型の仕事出入り自由な企業が成長するができます。まずは時間軸ですが、定年をゴールと考えるのをやめること。「定年まで勤め上げる」という意識を捨て去るのです。働くキャリアは、そのずっと先まで続きます。定年=引退=老後=余生という枠組みから自由になることをおすすめします。もう一つは「空間軸」を広げること。自分の属するコミュニティを、会社の外の空間にも広げていくことです。会社と家庭のほかに、趣味でも、地域活動でも、何でもよいので、他者との関係をなるべく多く築いていく。最近ようやく、副業・兼業を持つ働き方が市民権を得てきました。まだまだ副業・兼業する会社員は少ないですが、会社以外の職業人のコミュニティをつくる機会として注目したいです。多種多様なコミュニティへの所属をすすめ     からです。たくさんの価値軸に出会うことで、るのは、一つのコミュニティだけに閉じこもっていると、多様な価値軸に気づきにくいそれらのなかから自分に合うものを選び取ることができるようになります。いろいろなコミュニティとつながることを若いうちから始めていけば、例えば50代になったときに、そのなかから会社に代わって主軸となるコミュニティが見つかるかもしれないのです。コロナ・パンデミックは、図らずも「会社へ行けない」日々を余儀なくされ、自分を見つめ直す、また、会社以外のコミュニティと出会う契機となったという意味で、ライフシフトの追い風となった面もあります。大野 えます。その会社が、社員に対して「会社に依存するな」というのは、どこか矛盾しているように思えるかもしれません。しかし、これからは、人材を囲い込み、会社に依存することを社員に求めるような企業に人は集まってこないし、社員を引き留めることもむずかしくなるでしょう。新卒で入社し、その会社で育てられ、その会社のコミュニティしか知らない、いわゆる正社員だけで事業が続けられる時代は、とうに終わっています。これか会社は、よい人材を引き留めたいと考らは、社内外から最適な人に集まってもらい、いろいろな発想や技術、知恵を出し合いながら事業の目標達成に向かっていくプロジェクト型の仕事が増えていきます。きをすることに意味はありません。何らかの事情で通勤することが困難な人、一度その会社を退職して戻ってきた人、ほかに本業を持っていながら縁あってその会社にかかわっているフリーランスや副業・兼業の人など、多種多様な人材が引き寄せられる企業、敷居の低い出入り自由な企業が、これからは成長していくのではないでしょうか。業の努力義務となりましたが、そこに、社会貢献活動や委託契約といった、自社での雇用以外の選択肢が加わったことは、企業と個人の新しい関係を探る意味でも注目しています。そこに、正社員や非正規社員といった線引2021年に70歳までの就業確保措置が企―ライフシフトには、会社に依存しない生き方が望ましいという考え方が基底にあると思うのですが、その考えを推し進めることは、会社にとってどのような意味がありますか。2022.84ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO大野誠一さん

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