エルダー2022年8月号
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課題は本人の希望と求人内容とのギャップ(年3回)、就業体験会の六つの事業を柱に取組みを展開している。協議会が特に力を入れてきたのが、〝高齢者にできる仕事〟を増やすための取組みだ。「事業者のみなさんもさまざまな課題をお持ちですので、シニアがかかわることで解決できることはないか、相談をしながら、仕事の切り出し方を考えて、高齢者ができる仕事を増やしてきました」(田中さん、以下同)例えば観光分野では、鎌倉市には外国語ができる高齢者が多く在住していることから、鎌倉市に数多くできたゲストハウスにおいて、フロント業務や清掃業務などの仕事を開拓した(コロナ禍以前の取組み)。またIT分野では、事業者と相談し、AIスピーカーを高齢者の家庭に設置する際に、同世代の高齢者が訪問して使い方を教える仕事や、シニア向けアプリなどを開発した際に、使い勝手などをチェックして感想を伝えるテスターの仕事などを生み出した。「テスターの仕事は、シニア層をターゲットにした開発をしているベンチャー企業などには、非常に興味を持っていただけました」こうした取組みの結果、初年度の2017年度の就業者数は40人程度だったが、徐々に活動が浸透し、3年目の2019(令和元)年度には123人の就業を実現。2020年度にはコロナ禍の厳しい情勢のもと、134人が就業している。コロナ禍で協議会の取組みも制限を受けてきたが、合同就職説明会や就業体験会などのイベントも徐々に再開しつつある。そのなかで、田中さんが一番の課題としてとらえているのが求人開拓だ。先にあげた観光・IT・保育分野で開拓した仕事は、コロナ禍でいずれも困難になった。そこで現在は、コロナ禍によって一気に進んだIT化に活路を見い出しているという。「テレワークが増えて、自宅でも働ける時代になりました。そのため、高齢者のITリテラシーを高めることによって、時間や場所に縛られない、新たな仕事の切り出し方ができるのではないかと模索しているところです」一方で、高齢者へのアンケートによると、事務職(デスクワーク)での就労を希望する声が圧倒的に多いという。しかし、現状で募集が多いのは、介護や清掃、マンション管理などの仕事となっている。「現役時代の経験を活かせる仕事を望む方は多いのですが、コロナ禍以降、事務の求人は少なくなっていますし、現役世代を含めた募集の場合、高齢者の採用は厳しいのが現状です。そんななかで、考え方を柔軟に変えられる人ほど、活き活きとした生活を見つけられているような気がします」職場の一つとして力を入れていきたい分野だが、単に「介護の仕事があります」というだけでは、雇用に結びつかないケースも多い。求人の多い介護業界は、市としても高齢者の観光スキルアップセミナーの様子情報提供の中心的な役割をになっているWEBサイト「セカンドライフかまくら応援サイト」2022.862

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