エルダー2022年9月号
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高齢社員の二つの役割若者への助言の第一歩は傾聴ゅんゅんます。それらを乗り越えてきた経験は貴重です。失敗をおそれる人に共通してみられるのは、「批判されたくない」という気持ちです。「あいつはダメなヤツだ」という評価を受けたくないという側面もあります。低い評価をされると、その後の昇進に悪影響を与えるからです。失敗をどうとらえるかは、組織風土も深く関係します。失敗をおそれずに挑戦することを高く評価する会社かそうでないかによって、会社のなかでの失敗の位置づけが変わります。ただ、社長は「挑戦して失敗してもいいんだ」といっているのに、挑戦する人が増えない会社もあります。その理由は、中間管理職の行動にあります。一定の組織を任されている部課長クラスの人たちには、業務を効率的に進めていくことが求められています。失敗には時間とコストがかかるため、業務効率にとってはマイナスです。挑戦することの重要性はわかるけれども、管理職として高く評価されたいと考えると、成功することがある程度わかっている案件への挑戦は認めるけれど、成否がわからないような案件への挑戦には及び腰になります。この場面での高齢社員の役割は、管理職に対するものと一般社員に対するものの二種類になります。管理職を経験したことのある高齢社員であれば、現役の管理職の悩みに共感することができます。「実は自分も悩みながら管理職をやっていた」という話をすることによって、悩んでいるのは自分だけではないことを現役管理職は知り、少し安心できます。また、自分自身の経験だけではなく、先輩管理職のことを話せるのも高齢社員の強みです。管理職として部下に挑戦させるかどうか悩んでいるとき、高齢社員は管理職の視野を広げてあげることができます。「目先のコストのことを考えれば、成功するかどうかわからないことに挑戦させるのはリスクが大きいと考えて躊躇するのはよくわかる。でも、その部下の成長を第一に考えれば、ここで挑戦させた方がよいのではないだろうか。その部下が成功するように、自分もできるだけ手伝うからやらせてみようよ」と背中を押すことです。管理職の大切な役割の一つに部下育成があります。少し背伸びをしなければ達成できないような課題に挑戦させることは、部下の成長をうながすうえでとても有効です。逡し巡じする管理職に寄り添い、悩みを共有して一歩踏み出す勇気を持ってもらうことが大切です。高齢社員のもう一つの役割は、挑戦する後輩の持つ不安を払拭することです。失敗するかもしれないと思うと萎縮してしまって、本来の力を発揮できない場合があります。未知の分野に挑戦するとき、だれしも不安になります。そのとき、高齢社員の助言が効果を発揮します。「新しい案件をまかされたとき、自分も実は怖かった。どうしてこんな役割をまかされるのだろうと管理職を恨んだこともあった。でも、いまふり返ってみると、やってよかったと思う。あの案件に挑戦していなかったら、いまの自分はないのではないかとさえ思うこともある。◯◯さんが不安な気持ちを持っているのはよくわかる。でも、この案件に挑戦することは、◯◯さんの能力向上に役立つはずだ。できるだけの支援をするからやってみようよ」「失敗しても大丈夫」という気持ちで果敢に挑戦することがよい結果をもたらします。一歩踏み出せないでいる後輩の背中を押すことも高齢社員の大切な役割です。とがあるでしょうか。筆者は、高齢期の働き方を考えるうえで、多くの題材を提供してくれる映画だと思っています。映画「マイ・インターン」をご覧になったこ特集活かしてますか? 高齢社員の能力・経験9エルダー

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