エルダー2022年9月号
14/68

■■■■■る。この技能認定の指導のために同社の一角に設けられたのが、「テクニカルトレーニングルーム」(通称「TTR」)だ。TTRには、トレーニング用の器具や部品とその解説、ねじの回し方の良し悪しを示すサンプルなどを展示しているほか、失敗事例の写真に説明書きを添えて1枚ずつラミネート加工をして束ね、閲覧しやすくするなど、ていねいにつくりこまれた資料が用意してある。実物と写真を多用した資料は、まさに教材といえるもので、TTRはまるで学校の工作室のようだ。資料が充実しているだけに、「製造業で働くのが初めて」という新人にはもってこいの施設である。ここで指導する高齢社員は、TTR専属の講師として配属されているわけではないが、日ごろの業務の合間をぬって、配線や組立て作業に長けたベテラン社員が、若手社員を相手に、少人数形式で指導している。同社で顧問を務める池■田■正■成■さんは、TTRを活用した高齢社員による技能継承の取組みについて、「当社が創業した40数年前は、ものづくりが盛んな時代で、企業がこぞって独自の生産方式を考えて実践していました。その時代を生きてきた高齢社員は、ものづくりについて熟知しています。経験の浅い若手に対して、『ものづくりとは何か』という心構えから指導をしてもらっています」と語る。てきた高齢社員だけではない。メーカー勤務の経験を持ち独自の技術を持つ人材なども、その知見を活かして指導にあたっている。勤続33年のベテラン技術者。主に制御盤の組立て作業を担当している。業務中は若手社員とのコミュニケーションを大切にしており、若手の作業や手つきに目を配り、作業が滞っていたり悩んでいたりするときは、「ほかのやり方を試してみてはどうか」、「こんなやり方もあるよ」と、アドバイスをしているそうだ。なく適切な助言をしてくれる土蔵さんを多くの社員が頼りにしており、作業に行き詰まると土蔵さんにアドバイスを求めにくるという。土蔵さんが日ごろから心がけているコミュニケーションが、話しかけやすい雰囲気をつくり、若手も自発的に質問するようになり、それが若手の技能向上につながっている。とはあまりせず、ヒントを示して自分で考えるようにうながしているという。問題の解決方法なお、指導役を務めるのは、同社で長年勤め提案型の指導を行い、円滑なコミュニケーションで若手を育成製造課に所属する土■蔵■伊■左■美■さん(72歳)は経験の浅い社員たちの状況を把握し、さりげ土蔵さんは、質問の答えをそのまま教えるこ池田正成顧問(左)、池田篤史取締役製造部部長(右)技能認定の指導のために設けられた「テクニカルトレーニングルーム(TTR)」2022.912

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る