エルダー2022年9月号
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す。もちろん、自分たちだけでできるという自負もありましたが、足りないところがあることも自覚していましたから、『そこは学びながらやっていこう』と考えました。事業を軌道に乗せていくためには、技術的な課題だけではなく、企業活動を行っていくうえでの法律的な問題もあります。自分たちにコアのアイデアがあって、それを実現するために、経験のあるプロフェッショナルの知見から学び、活用していこうというスタイルで、求人を行いました」具体的な求人にあたっては、創業メンバーにインターネット関連企業の出身者が多かったこともあり、自然な流れでインターネットで求人を行った。技術顧問的な人材を幅広く募集したところ、深谷さんからの応募があり、そのキャリアを見て業務委託契約を結んだという。あくまで求めていたプロフェッショナルとしての経験と知見で判断し、年齢ではなく、能力を適正に評価して、柔軟に対応する。その姿勢が、まさにベンチャー的といえそうだ。深谷さんは、大学卒業後に新卒で日本電気株式会社(NEC)に入社。大型コンピュータ用のブラウン管式文字表示装置の開発・設計や、AV機器や自動車電装に使用される集積回路の回路設計などの業務に従事し、その関連業務である特許出願・技術契約や、顧客への技術サポート、販売部門への市場開拓支援なども経験しており、エンジニアとして幅広い業務に精通している。海外での勤務経験もあり、定年退職後は、NEC関連会社の技術アドバイザーを務めるかたわら、上海・香港での海外設計拠点の立ち上げ・運営や、マレーシアで若手エンジニアの育成などにも取り組んできた実績を持つ。まさに、創業間もないフォトシンスに必要な知識・経験を持つ人材だった。出社と在宅ワークを柔軟に組み合わせ能力を存分に発揮できる仕組みを整備契約直後は技術顧問的な立ち位置で業務にたずさわっていた深谷さんだが、徐々にその役割が変化し、会社にとって欠かせない人材になっていったと熊谷取締役は話す。「当初は、社内にものづくりの経験者が少なかったので、技術的なアドバイスはもちろん、『そもそも、ものづくりとはどんなものか』を教える役割をになってもらいました。現在は、会社の戦力として事業に直接かかわってもらっています。深谷さんの方から、進んで新しい仕事をしてくれており、会社にとって欠かせない存在です」と、その仕事ぶりを高く評価する。ついて、ものづくりの仕事の特性をふまえて説明してくれた。「当初は、顧問的な立場で技術アドバイスを行っていました。週1回数時間出社して、担当技術者の抱える技術課題についての助言に加え、一部、設計実務のサポートを行っていました。その後、製品の開発が具体的に進み、開発が後半に向かうにしたがって、課題も多くなり、仕様書作成支援や回路設計実務サポート、設計レビュー、試作プリント配線基板の評価、電子部品の特性・信頼性評価、セットや部品の故障解析など、現役技術者の実務に相当する分野まで行うようになりました。新製品の開発は、特に後半に負荷がかかり、この時期は日数も労働時間も長くなります。製品開発が終了し量産の段階に入ると、トラブルがなければ、業務量はだいぶ減ります。深谷さんは、業務の広がりと現在の働き方に熊谷悠哉取締役兼開発部部長2022.916

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