エルダー2022年9月号
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信頼関係をベースに労働時間と成果を勘案した業務委託契約深谷さんの契約形態は業務委託契約。しかし、現在の通常の仕事パターンは、設計現場の技術課題や回路設計などの要請に基づいて、基本的に月1回程度の出社と在宅ワークで仕事を処理して、必要に応じて随時出社するという柔軟な働き方をしています。実験に使う機材も自宅に設置してもらっているので、実験をともなう業務でも7割は在宅ワークで可能です。とはいえ、開発スケジュールの期限が迫っている繁忙期には、週3日程度出社して、約5時間勤務し、当日処理しきれなかったものは持ち帰って、在宅ワークでこなすようなこともあります」非常に柔軟な働き方で、実験機材の貸出しなど、在宅で仕事ができるように細かな配慮がなされている。深谷さんの通勤の体力負担を軽減するために配慮されたものだ。深谷さんは「やはり年を取ると、通勤はかなり負担になります。技術能力では、現役に劣らないという自負はありますが、体力の衰えは否めません。高齢者にとって、このような柔軟な働き方は、体力や集中力の衰えを補ううえで、非常に効果があると思います」と話す。シニアの持つ能力を効果的に活用するためには、体力などの衰えを補って、仕事に効率的に取り組めるような配慮が必要不可欠なことがうかがえる。また、今年で3期目を迎えた新卒採用者の研修では、深谷さんが講師を務めており、ものづくりの歴史や、どんなことを考えてものづくりを行うのかなどについて、営業職を含む新人に講義を行っている。ものづくり文化を会社に定着させる役割も果たしており、会社にとってその存在は大きいと熊谷取締役は話す。「当社は、テクノロジー企業として、創業時から技術へのこだわりを強く持っています。製品を長く使っていただくサービスを提供することがビジネスモデルなので、直接技術にかかわらない営業やカスタマーサクセスなどでも、自分たちの売っている技術を深く理解することが重要になります。技術で未来をつくっていく、世の中にない商品を生み出していくという会社のミッションを全体に浸透させるうえでも、深谷さんには重要な役割をはたしてもらっていると感じています」通常の業務委託契約とは違って、成果物の価格がそのまま報酬額となるわけではない。成果物の単価に稼働時間も加味して、会社と調整して報酬額が確定する独特な方式をとっている。この稼働時間も、実際にかかった労働時間とそれぞれの課題解決、作業の程度に応じて必要だと考えられる時間を勘案して調整した時間となっている。「簡単にいうと、成果物プラス時間で見る形になっています。単純に『この技術課題を委託していくら』というものではありません。基準となる技術課題のタイプ別単価は設定していますが、これに、実際の労働時間と技術課題に応じて調整したものを加えて勘案することで、報酬額を決定しています。ほかのエンジニア社員も裁量労働で、アウトプットを中心に評価していますから、大きく違う方法をとっているわけでもありません。深谷さんから、技術課題の業務内容と、それに応じて調整した稼働時間を申告してもらい、話し合って調整するという形です。基本的に、メンバーの一員として動いても特集活かしてますか? 高齢社員の能力・経験エンジニアの深谷弘一さん17エルダー

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