エルダー2022年9月号
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サポート役」としても活躍している。「幅広い年代の社員がいるなかで、高齢社員は特に、職場に安心感と安定感をもたらす存在になっています」と加藤社長は話す。例えば、障害のある施設外就労者に対しては、仕事内容について、会社から支援員に作業の内容を伝え、施設外就労者は支援員を通じて作業の仕方を学ぶ。ここではまず、支援員への作業の伝授が重要となるが、これを高齢社員が担当している。「4人の高齢社員は全員が適任と感じています。施設外就労者が行っている作業には、塗装する部品をハンガーに吊る作業が多く、取り扱う部品が変わるとその都度教えるのですが、高齢社員は自分でやって見せながら、ていねいな話し方で支援員に教えています。支援員の方にとってもわかりやすく、安心感もあるようです。その後の障害のある方の就労は、安全面での不備はないかなどを高齢社員が見守っており、みなさんが安心して作業をしているように見受けられます」(加藤社長)施設外就労は、月曜日から金曜日の9時からに吊る作業のほかには、不良品を見分ける作業などがある。いずれも何百個、何千個と同じ部品を扱う、くり返しの作業となるが、機械化をすることができない重要な作業だ。たいていの人は、最初のうちはスムーズにできても、30分もするとスピードが落ちたり、音を上げたりするそうだ。ところが、施設外就労者たちは、早くはないものの一定のスピードで確実に作業を継続していく。これらの仕事にやりがいを感じて長く続けている人も多いという。高齢社員が、施設外就労のサポート役として活躍している背景には、技術や能力、もともとの資質に加え、力が弱かったり、動作が緩やかになったりする障害のある人の特性を、自分が高齢になってわかるようになり、「サポートしたい気持ちが自然に出ているのかもしれません」と加藤社長は話す。「障害のある人たちもみな一生懸命働いています。単調な仕事の連続ですが、その積み重ねが当社にとって業務を安定的に進めていくための大きな力になっています。大事な委託先であり、みなさんが大事な人材です」この就労を支える高齢社員は、いまや同社にとって「なくてはならない存在」だが、そのサポート力は若手の育成にも貢献している。若手社員と高齢社員が仕事において話す機会は決して多くはないとのことだが、「こういうやり方もあるよ」と高齢社員がさり気なく伝えたり、休憩時間のちょっとした会話に若手を気遣う様子が垣間見えるそうだ。どをつくり使用していることも多く、その姿勢や技術が作業効率を高めており、若手の手本になっているという。「高齢社員は、業務に直接関係はないが幅広いスキルや資格を持っていたりと、知識や技術、経験にすばらしいものがあります。その技術や資格に若手が関心を持ち、﹃将来こういう人になりたい﹄、という存在になっています」と加藤社長は目を細める。にいち早く気づくなど、ふとした瞬間に発揮されており、マニュアルにはないようなさまざまな面で若手に大きな影響を与えているという。めてから、同社では以前にも増して、「だれにとっても働きやすく、健康や安全に配慮した作業環境づくり」に努めるようになった。務内容が本人の負担になっていないか。そうした視点から、就労継続支援事業所の支援員に障害のある人の声を聞いてもらうことがある。高また、高齢社員は自分たちで工夫して道具なベテランの力や経験は、例えば機材の不具合みんなが働きやすい職場環境や制度整備に取り組む多様な人材が働く職場づくりに取り組みはじ高齢社員や障害のある人にとって、いまの業特集活かしてますか? 高齢社員の能力・経験21エルダー15時まで社内で行われている。部品をハンガー  

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