エルダー2022年9月号
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食文化史研究家● 永山久夫23エルダーFOOD347明治になり肉料理とともに普及元気の出るタマネギの食べ方ああ、涙がとまりません。タマネギを切りはじめたら、涙がポロポロなのです。目を刺激する成分が、とっても多いんです。でも、がまん、がまん。その成分こそ、元気のもとであり、美肌や長寿のもとになるからなのです。硫化アリルという揮発性の強い成分で、疲れたときなどに体を元気にする働きもあります。古代エジプトには、ピラミッド建設に従事した労働者にニンニクとともに、タマネギが支給されたというエピソードがありますが、古くからスタミナ強化食として崇拝されていたのです。日本にタマネギが入ってきたのは、江戸時代になってからで、長崎にもたらされています。その後、北海道で本格的なタマネギ栽培が開始されるのは、肉を用いた西洋料理が普及する明治時代になってから。カレーライスの流行とともに家庭の食卓にも登場するようになりました。辛さのなかに、かすかな甘味もあり、カレーなどの肉料理によく使用されてきました。体力の低下や疲労回復などの特効薬というと、何といっても、豚肉などに多いビタミンB1ですが、その体内利用効率を高めてくれるのが、タマネギの硫化アリルなのです。タマネギには、ケルセチンという抗酸化成分も多く、血液サラサラ作用で注目されています。早く元気を取り戻したい、脳を活性化させてもの忘れを防ぎたいと思うときには、カツオ節や海苔、豚肉などビタミンB1の多いものとタマネギの取り合わせがベストです。硫化アリルを上手に摂るには、生食が一番ですが、薄切りにして、水にさらす場合でも、2〜3分で引き上げないと、硫化アリルは水に溶け出してしまいます。水を切って、小鉢に盛り、カツオ節をまぶし、醤油をかけて食べますが、コツはすり胡麻をひとつまみふりかけること。味にコクが出るだけではなく、頭が軽くなって、体中から元気がわいてくることでしょう。胡麻にも疲労回復をサポートする、ビタミンB1が含まれているからなのです。タマネギで涙ポロポロがいいんです日本史にみる長寿食

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