エルダー2022年9月号
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実用塾の経営者門■という長州藩士だ。禄■高■約五十幕末の萩(長州藩)に、人気者の私塾塾長がいた。久■保■五■郎■左■衛■石というからそれほど貧しい武士ではない。一族に学者が多く、かれ自身も学問が深く私塾を開いていた。しかし普通の塾(儒学を教える)ではなく、経営学を教えていた。藩庁に勤めて役立つ帳簿(バランス・シート)の記帳法や、ソロバンをはじく技術などを教える、いわば実業学校だ。面白い人生観を持っていた。門人に、 「みんな、萩城に入って出世しろ。そして長州藩を出世させろ。徳川幕府のなかで長州藩を出世させて幕府も世界で出世させろ。出世は決して悪いことではない。だからそのために帳簿をキチンと整理し、計算をまちがえないようにシッカリ、ソロバンを習え」といっていた。門人たちはこの教えを守り、卒業後藩庁に入った。仕事ぶりがたしかなので重宝された。 「久保塾出身者は本当に役に立つ。しかもすぐ役に立つ」と評判だった。萩に住む人だけでなく多くの親   ■■■  ■ た。つまり、が五郎左衛門の塾に子弟を入れた。そして卒業後城に勤めさせると、評判がいいのでさらに欲が出 「もっと出世させたい」という上昇志向だ。塾長の五郎左衛門のところに要望がきた。端的にいえば、 「お城でもっと出世する方法を2022.930[第118回]

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