エルダー2022年9月号
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■■■営業職で重ねた経験を応用力に変え新規開拓に就業規則を変更。品登録などを行うWEB担当者が働きやすくなった。同社の総務・経理・労務関係の手続きなどはすべて魚住さんが行っています。「毎朝元気いっぱいに家を出るところをお隣りさんが見ていて『まだ働いている!』と驚かれます。これからも会社に必要とされるかぎりがんばります」と、力強く抱負を述べてくれました。海外営業部で活躍する溝■口■勇■二■さん(71歳)は、E Cサイトの注文管理、商総合家電メーカーに勤務し、15年間にわたりドイツ、アメリカ、イギリスに駐在。海外営業、生産技術の分野で力を発揮してきました。再雇用で65歳まで働き、引退して半年ほどゆっくりした後、奈良県が実施しているシニア人材紹介サービスに登録。自宅から通いやすい距離にあった同社を紹介され入社しました。「当社には長い歴史があり、地元・奈良県の商品を世界に認知してもらうために働けることも魅力でした。現在の仕事は新規取引先の開拓が中心です。入社したころは務まるか不安でしたが、商品が家電でも竹編針でも、売るための仕組みや営業の基本は同じことに気づきました。私たち高齢者は、長い職業人生のなかで積み重ねた知識や経験と、それに裏打ちされた応用力が武器なのです」同社がドイツの展示会に初めて製品を出品した際、欧米では金属製の編針が主流で、競合メーカーが包装された商品を展示するなか、溝口さんは竹という自然素材の魅力をアピールするため、手で触れられる展示方法を考案。好評を得て欧州やほかの国々との顧客開拓につなげています。海外駐在経験が長く、現地の文化にも精通している溝口さんだからこその活躍です。「今後も引き続き製品のイメージアップを図り、技術と素材を活かした新商品の開発で、ビジネスの幅を広げていきたい」と抱負を語ります。北場プランナーは「4年前に初めておうかがいしたときから、魚住さんが窓口となり意見交換を行ってきました。人事管理の整備を中心に新しいチャレンジをされているという印象を受けました。ショールームを拝見した際は、センスよくコーディネートされたディスプレイを見て、てっきり若い女性が担当していると思っていましたが、溝口さんが手がけていると聞き、その高い感性にとても驚きました」と、2人の活躍ぶりに感銘を受けたときをふり返ります。尾山代表取締役は、魚住さんや溝口さんをはじめとする高齢社員の活躍ぶりについて、「仕事に対するこだわりを持っていて、どんなことにも積極的に取り組んでいる高齢者の方が来てくれたおかげで、会社が発展してきました。やはり最終的には〝人柄〟が大事です」と話します。また、尾山常務は「魚住さんや溝口さんの質の高い仕事ぶりを見ていると、仕事に年齢は関係ないことがわかります。もっと企業と高齢者のニーズをくみ取り、マッチングできる仕組みがあるとよいですね」と、生涯現役時代のシニア就労のあり方について意見を述べてくれました。会社が必要とする人材を求めたところ、自然と高齢者雇用につながっていた近畿編針株式会社。この先もベテラン勢が会社の牽引役として活躍する様子が目に浮かびます。(取材・西村玲)カタログをモニターでチェックする溝口勇二さん35エルダー66歳で入社して勤続5年目。前職では国内有数の

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