エルダー2022年9月号
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最終回着実な復帰への意欲を引き出すため在宅支援にはコミュニケーションが不可欠嗣■さんと社内診療所スタッフを代表して保健師株式会社愛知銀行は1910(明治43)年の創業以来、「助け合いの精神」を大切にしてきた。同社はもともと社内診療所を設置するなど社員への支援制度が充実していたが、2018(平成30)年にこうした制度を「あいぎん健康宣言」として明文化し、さらに戦略的に健康管理に取り組んできた。そこで、人事部人事グループ調査役の山田晃■の伊藤里江さんなどから、同社の両立支援策と診療所の役割などのお話をうかがった。両立支援を制度として整えるだけでなく 使いやすい制度となるように工夫家族的な社風の同社では、「両立支援」という言葉ができるよりずっと以前から職場復帰を手助けする制度が整えられていたという。「制度として整備されているだけでなく、使いやすい制度になるように工夫されていると自負しています」と山田さんは強調する。例えば、独自の取組みとして「保存有給休暇制度」があるが、これは失効した有給休暇を最大60日積み立てられるもの。7日以上の連続使用が原則だが、同一傷病にかぎり1日からの利用も認めているため、1日〜2日だけ病院に行く、という際にも気軽に利用しやすい。また、保存有給休暇を使い切った後は欠勤扱いとなるが、そこから3カ月間は傷病が理由である場合にかぎり給与の80%を支給する「収入保障」も設けられている。さらに欠勤期間終了後に休職扱い(期間は勤続年数に応じて最長3年まで)となってからも同様に給与の80%を支給するという制度だ。 「底流にあるのは、勤めてくださっている方を大事にしていくという姿勢ですが、私はやはりご本人がどうしたいかという意思を尊重したいと考えています。治療に専念して仕事は一切中止、という意向であればそれに沿いますし、面談するなかで『会社に戻りたい』、『働いている自分が好きなんです』と、仕事が好きで戻りたいという気持ちがある方にはその気持ちを最優先にしながら制度を運用していくようにしています」と、山田さんはその思いを語る。両立支援制度を運用していくなかで、メンタル不調に陥り、「復帰しようと思えば思うほど体が逆の動きをする」と訴える社員に寄り添い、最大で3年後という復帰までの期限を見すえながら復帰プログラムを策定し、徐々に準備をしながら職場復帰に至ったというケースもあっ2022.946 加齢により疾病リスクが高まる一方、近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病が「長くつき合う病気」に変化しつつあり、治療をしながら働ける環境の整備も進んでいます。本連載では、治療と仕事の両立を支える企業の両立支援の取組みと支援を受けた本人の経験談を紹介します。   ■ 株式会社愛知銀行社内診療所を設置して健康相談を身近に両立支援も本人の意向を尊重する手助け病気とともに働く

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