エルダー2022年9月号
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中高年期の地位・能力向上意欲2 歳歳歳歳歳歳歳歳歳歳はないでしょう。現在40代後半の団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)より人口規模の大きい世代が、その下にいないからです。戦後最大の人口規模である団塊世代(1947〜1949年生まれ)が30代でした。その後、団塊世代は40代・50代・60代と年齢を重ねていきますが、1990年代は団塊ジュニア世代が20代・30代でしたので、39歳以下の人口がそれほど減りませんでした。しかし、団塊ジュニア世代が40代になった2010年代以降、40代・50代が本格的に労働力のマジョリティになったわけです。このように労働力のマジョリティが若年層から中年層にシフトする変化を労働力のミドルエイジ化と呼ぶことにします。このミドルエイジ化は、たんに中年層が量的に増えるという問題にとどまらず、従来の人事労務管理の前提を問い直す契機にもなります。いわゆる日本的雇用慣行は、若年層の人口規模が大きい時代につくられました。長期雇用と年功賃金は若者が賃金の上昇を目ざして勤勉に働く活力を生み出し、その活力を原動力に日本は経済成長をしました。しかし、労働力のミドルエイジ化によって従来の人事労務管理のもとで意欲をもって働く若者は減っています。そうした状況で、日本の経済社会が再び活力を取り戻すためには、発想の転換が必要です。このような問題意識で、以下では、『労働政策研究報告書No.活力ー産業構造と人口構造に対応した働き方の課題ー』(以下、労働政策研究・研修機構〈2022〉)をもとに、労働力がミドルエイジ化した今日の日本社会において活力を維持していくためのポイントを以下で解説します。社会は、若者が地位と能力の向上を求める意欲を生産活動の原動力としてきました。大企業では、新卒一括採用された若者が、長期雇用と年功的な処遇のもとで、入社年次別に昇進競争をし、その決着がつくのは中高年期という「遅い選抜」が行われてきました。また、昇進競争におけるエリートとノンエリートの区別は曖昧であり、仮に学歴が低く、ブルーカラーとして入社した場合でも、その後の長期的な努力によって管理職に昇進できる可能性がありました。反対に、高学歴でホワイトカラーとして入社した場合でも、その後の働きぶりで評価を落とせば昇進できない可能性もあります。エリートもノンエリートも横一線で上位の地位を求めて長期的に能力の向上に励む、そのような人事管理でした。中小企業では、新卒採用は一般的でありません221変わる雇用社会とその資料:(独)労働政策研究・研修機構「職業と生活に関する調査」(2019年)、労働政策研究・研修機構(2022)p.74-77をもとに筆者作成特別寄稿労働力のミドルエイジ化とその活力男 性35-4445-5455-59女 性35-4445-5455-5960%50%40%30%20%10%0%60-6425-3460-64自己啓発次の役職への昇進意欲51エルダー図表2 性・年齢別 次の役職への昇進意欲と過去1年間の自己啓発実施割合[正規雇用]60%50%40%30%20%10%0%25-3420代・30代がマジョリティであった時代の経済39歳以下がマジョリティだった1980年代は

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