エルダー2022年9月号
56/68

人に頼らないのはよいことか45他者との交流を活力にでも社会団体活動実施割合は低くないことです。かつてシニアボランティアといった形で、職業生活を引退した後の活動として地域活動やボランティア活動への関心が高まったことがありました。図表5でも、男性は60ー64歳の実施率が上昇しており、定年を機にこうした活動への参加が増えている様子がうかがえます。しかし50代以下もません。女性は30代から50代にかけて男性より高い割合を示していますが、男女差は大きくありません。また、この社会団体活動は学歴差が小さいことも指摘しておきたいと思います。図表6をみましょう。学歴が「大学以上」の女性が目立って高い割合を示していますが、それ以外の女性と男性の間には大きな差はなく、男性の学歴差も大きくありません。ここで示した社会団体活動は経済活動ではありませんが、労働力がミドルエイジ化した今後の日本社会の活性化を考えるうえでヒントになる結果ではないかと思います。ここまでの結果から、労働力がミドルエイジ化した日本社会では、地位や能力の向上を求める意欲よりも、社会参加や社会貢献が活力の源になっているということができるでしょう。しかし、逆説的ですが、労働力のミドルエイジ化には社会参加を消極的にする面もあります。図表7に人との付き合い方において、困ったことがあったとき人に助けを求めるか(ヘルプ型)、自分のことは自分でするか(セルフ型)の自己認識の割合を示しています。男女とも年齢が上がるとヘルプ型は低下しています。つまり、年齢を重ねると人に頼らなくなるのです。これは自立した人間関係を築こうという、尊ぶべき自助の精神のあらわれとみることもできるでしょう。頼りない若者が頼もしい大人に成長したという評価をする人もいると思います。しかし、図表8をみると、セルフ型は男女ともにヘルプ型より中高年期の社会団体活動実施割合が低く、社会参加や社会貢献といった面で積極的とはいえません。「困ったときはお互いさま」ということでしょうか、人に頼る意識を持っている人の方が社会参加に積極的な様子がうかがえます。なお、労働政策研究・研修機構(2022)では、昇進意欲や自己啓発実施割合においても、セルフ型の方が高いという結果は得られていません。こうしてみると、セルフ型は自助・自立というより、他者との交流や社会参加・社会貢献に消極的で、自己完結的な意味合いが強いようです。「働かないおじさん」批判をはじめ、中高年に対する厳しい声をときどき耳にします。たしかに、地位や能力の向上という若者の基準でみると、中高年、特に男性は意欲の低下が明らかです。しかし、かつての団塊世代や団塊ジュニア世代のような人口規模で若年労働力を確保することはできません。労働力のミドルエイジ化が進む今後の日本では、中高年層の活力を引き出す施策を考えていくことが重要です。そのためには、社会参加や社会貢献の観点が重要であることを、本稿でみてきた調査結果は示唆しています。また、女性は中高年期も自己啓発に意欲的ですが、そのなかでも勉強会のような他者との交流がある活動(他者交流型自己啓発)が活発であることも労働政策研究・研修機構(2022)で明らかになっています。地位の向上を目ざす昇進競争は他者に勝とうとする意欲が活力になっています。しかし、今後は他者との交流を活力に経済社会を再編成していくことが重要だと考えられます。2022.95430%を超えており、どの年代も低い割合とはいえ

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る