エルダー2022年9月号
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新版図解でスッキリわかる高年齢者雇用の実務ポイント  ジョブ型vsメンバーシップ型日本の雇用を展望する多様な働き方に向けた制度改革や、コロナ禍でテレワークが普及するなか、「ジョブ型」と呼ばれる雇用制度が注目されている。ジョブ型は、職務内容を定めて、その職務に合う人材を雇用する制度。対して、職務内容を定めずに雇用する、日本に広く浸透している従来の制度は「メンバーシップ型」といわれる。本書は、ジョブ型が日本の雇用にどのような影響を与えるか、また、その課題は何かについて、メンバーシップ型との対比を軸に、各界の論者が理論的な検討や分析、解説をしている。第1章では、清家篤氏(日本私立学校振興・共済事業団前理事長、慶應義塾学事顧問)が労働経済学の視点から、「ジョブ型雇用で本当に大丈夫か」と問題提起をしつつ、高齢者雇用との関連では、高齢化の経済分析の視点から、「高齢者の就労促進という点では期待したい」と述べている。ジョブ型雇用は、すでに仕事能力を身につけている中高年には好ましい働き方となり得る、という観点からである。一方で、仕事能力をまだ十分に身につけていない若者には、ジョブ型は向いていないとしている。全編を通して、話題の雇用制度について多くの示唆を得ることができる一冊である。改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となった。本書はこの改正法を重視して、「企業においては、高年齢者雇用をあらためて検討すべき、大きな転換点にあるといえる」と冒頭に記している。2013(平成25)年3月発行の同名書籍の改訂版として、本書は、前回好評であったという具体的なQ&Aによる説明を含めて、70歳までの就業機会の確保や同一労働同一賃金の視点をはじめ、年金、雇用保険、健康保険など、これまでの法改正を反映し、実務知識・ポイントをわかりやすく解説した内容となっている。第1編「60歳以降の雇用制度設計の仕方」では、継続雇用制度や人事制度、組織マネジメントのポイントと、グループ会社(特殊関係事業主)を活用した継続雇用などについて説明。また、「こんな時どうする?」と題して、多数の疑問に回答している。第2編「社員説明マニュアル」では、ライフプラン教育、継続雇用・再雇用時の手続きなどについて、図表を多用して解説。読みやすい文章も理解を深めてくれる。高齢者雇用の全般的な最新の知識や、実務的な対応方法を得たいという人事労務の担当者はもちろん、社内教育にも役立つ内容である。社会保険労務士法人みらいコンサルティング編著/慶應義塾大学産業研究所清家篤・濱口桂一郎・中村天■■江■・植村隆生・山本紳也・八代充■■史■ 著/清文社/2420円HRM研究会 編・中央経済社/3080円2022.956※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します「ジョブ型」が日本の雇用制度に与える影響などを考察実務担当者はもちろん、社内教育にも役立つ内容

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