エルダー2022年9月号
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「無理なく役に立つ」仕事に着目愛媛県の県庁所在地である松山市(人口約50万人)では、2016(平成28)年に高齢者の就労に関係する産官学8団体により、「生涯現役促進松山地域連携協議会」を結成。「新しいお仕事探し分野」、「介護分野」、「郷土料理・農産品分野」の3分野において、生涯現役促進地域連携事業に取り組んでいる。同事業を始めた背景について、実施団体である公益社団法人松山市シルバー人材センター事務局長代理の柳原祐二さんは、次のように話す。「ITの進展により、求職・求人のマッチングはとても便利になってきました。しかし、いくら求人情報が入手しやすくなっても、働かなくても生活できるような高齢者の方々が就労するようになるわけではありません。働くことへの抵抗感や足踏み感を払拭しなければ、潜在的労働力としてのシニア層の社会参加にはつながらないのではないか、とわれわれは考えていました」(柳原さん)柳原さんが引合いに出すのが、『統計で考える働き方の未来──高齢者が働き続ける国へ』(坂本貴志著・ちくま新書)のなかで、著者が、リクルートワークス研究所による「高齢者の就労事例の研究(福島2007)」に言及している以下の部分である。「この研究によると、高齢者が満足して働くためには、『無理なく役に立つ』ことが重要であると結論づけられている。(中略)『無理なく』というのは、いくつかの要素によって説明される。その中で重要なのが、第一に長時間労働ではないことである。そして、第二に、重い責任を負わないこと。(中略)第三に人から命令されずに働くことである」「われわれも、シルバー人材センターで日々、高齢者の方々と接するなかで、同様のことを強く感じていましたので、そうした『無理なく役に立つ』ことのできる仕事や仕組みを用意することが、潜在的労働力を持ちながら就労に至っていない方々を就労に結びつけるキーになると公益社団法人松山市シルバー人材センター事務局長代理の柳原祐二さん 厚生労働省では、地域の実情に応じた高齢者の多様な就業機会を確保するための事業を募集し、その実施を委託する「生涯現役促進地域連携事業」を2016(平成28)年度より6年間にわたって推進してきた。その実施事例として、今回は愛媛県松山市の取組みを紹介する。61エルダー生涯現役促進松山地域連携協議会(愛媛県松山市)郷土料理や介護補助などでの就労をサポート高齢者の潜在力や思いをすくい上げ「生涯現役促進地域連携事業」より地域発の取組みから学ぶシニア就業

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