エルダー2022年9月号
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高齢者との日ごろのつながりを事業に活かす「施設介護の仕事は、専門職でなければできない仕事ばかりではありません。仕事内容によっては、体力のある若者よりも人生経験のある高齢者に適した仕事はあるものです。例えば、介護度の比較的軽い入所者であれば、食堂に連れてきてから食事をして部屋に連れて帰るまでのサポートをすることは可能です。また、利用者の話し相手になれるのも同世代の高齢者ならではといえます」こうした考えのもと、同協議会では高齢者が「無理なく役に立つ」働き方という観点から、「介護助手」という仕事を切り出すことで、介護労働力の確保につなげることを目ざし、介護助手をになう人材の確保・育成や介護施設との調整に着手。2019(令和元)年度には、元気な高齢者がケアを必要とする高齢者を支える「おたすけ隊」事業をスタートさせた。人材不足が常態化している介護施設において、介護専門職の負担軽減と入所者等のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に貢献する事業として期待されている。なお、この取組みにおいても高齢者の人脈が活かされている。例えば介護施設の元施設長の協力を得ることで、介護施設のニーズ把握や施設への口添えなどをスムーズに進めることができた。また、高校在学中にダンス部でチアリーダーをしていた60代の女性に、デイサービスの利用者を対象とした音楽健康指導を提案したところ、かつてのダンス部の仲間を集めて「音楽健康指導士」の育成に取り組むようになり、活躍の場を広げた例もある。2017年度から2021年度までの5年間で、松山地域連携協議会の事業に参加した企業・高齢者はそれぞれ1390社・5737人、雇用就業者数は825人にのぼる。その大半を占めているのは、高齢者就労相談窓口をはじめとする一般的な就労支援の分野である。この分野で特徴的なのが「高齢者対象専門相談員」の配置で、現在は「シニア相談ブース」として、松山市シルバー人材センター内の「いきいき仕事センター」内に併設し、ハローワークと連携して相談窓口業務を実施している。「ハローワークはその性格上、一人に十分な時間をかけることがなかなかできないことがあります。そこで、ハローワークで求職に結びつくことができなかった高齢者のために相談窓口を設けました。この窓口では時間を気にせずに相談することができます」(柳原さん)は、通常の求人・求職活動では表にあらわれにくい高齢者の潜在力や就労ニーズなどを、十分な対話を通じてすくい上げ、就労に結びつけようとする姿勢である。日ごろからさまざまな高齢者とのつながりを持っているシルバー人材センターが実施主体だからこそ、できる取組みといえるのかもしれない。了するが、これまでつちかってきた事業を継続できるよう収益性確保の課題をクリアし、今後も高齢者が主体的に就労するための支援を行っていく方針だ。松山地域連携協議会の事業の根幹にあるの同協議会の地域連携事業は2022年度で終写真提供:公益社団法人松山市シルバー人材センター介護助手を養成する講習会の様子63エルダー

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