エルダー2022年10月号
32/68

介護業務のシェアを導入した背景には、同法人が一人一部屋のユニット型個室の施設運営を行っており、少人数のチームで対応していることもあげられる。介護施設に多い相部屋の多床室の場合は、食事や見守りなど同時に複数の利用者に目を配ることができるが、ユニット型個室の場合はそれがむずかしいため、介護事故などが発生しやすくなる。そこで、無資格・無経験でも対応可能な見守りなどの仕事を切り出し、地元の高齢者に担当してもらえば、人材不足も解消され利用者の安全性を確保することができる、という考えだ。介護業務のシェアの導入以降は、介護事故ゼロ・苦情ゼロを継続している。▼マッチングアドバイザーとプリセプター職員の体力や能力と仕事をマッチさせるため、事務部長、指導部長を「マッチングアドバイザー」に任命し、高齢職員が無理なく勤務を継続できるように配慮している。同法人では他社を定年退職した高齢者を採用しているが、経験やスキルがなくても就労可能な業務があることから、同法人への再就職希望者は多い。なお、人材を新規に採用した場合、年齢にかかわりなく、1年間専属の「プリセプター」(指導者)を指名し、仕事の悩みなどについて月1回以上は面談を行い、毎月のプリセプター会議において、業務の習熟度や課題などについて組織で共有し、人材育成を図っている。を行っている。このため、チームリーダー(最も若い職員は32歳)の運営能力が厳しく問われることになる。チームリーダーの会議は、「利用者の介護にとって何が効果的か」、ということについて学びとふり返りを行う場としている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、▼作業環境改善グケア(持ち上げずにスライドさせる)が可能となるよう、ベッドの入れ替えやスライディングシート、リクライニング車椅子などの導入を▼少人数のチームをベースとした組織体制で、研修および会議を密に実施同法人では、10人の利用者を1ユニットとして、8~9人のチームで2ユニット(20人)の利用者の介護を行っているが、これは国の基準よりも多い人員配置となっている。10人以下の職員構成であるため、日々の細やかな利用者の状態や、ヒヤリハットの報告、職場改善の気づきのほか、「ご利用者が喜ぶことを一生懸命に」という経営理念に沿った介護方法などについて緻密に情報共有できるだけでなく、チームリーダーによる構成員の人材育成も、無理なく十分に行えている。こうしたチーム体制内の関係があるからこそ、職員同士が、それぞれの職種の内容を認め合い、お互いを尊重し合う環境が整っている。すべての業務について、毎週カンファレンスを実施しているが、少人数のチーム体制による緻密なコミュニケーションによって、これらの会議や研修がうまく機能しており、職員間の不満もなく効果的な業務運営を可能としている。このような同社の体制は、多人数のチームで多人数の利用者を介護する多床室の介護施設よりも人件費はかかるが、事業運営上では大きな強みとなっている。個々の利用者に、きめ細やかに対応した介護が実現できるよう、職員の研修や会議を行うことを重視し、介護の業務フローはあえて作成せず、利用者にあわせた業務健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み職員の作業負担軽減のため、ノーリフティン30施設ケア研究発表会の様子社会福祉法人 愛誠会

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る