エルダー2022年10月号
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には、これからも期待に応えなければいけない」というプレッシャーに耐えられなくなったという理由です。また、ある保険会社の労働組合の幹部からも、「高い業績をあげ、表彰された社員が、それを重荷に感じて、辞めてしまうことが珍しくない」という話を聞きました。そのほか、優秀な成績を収めた学生やスポーツ選手が、「次もよい結果を残さなければ」という重圧に苦しむ例は、数多く見聞きされます。太田 業では、社長から賞状を贈られた社員が「この賞に恥じないよう、これからもがんばります」とあいさつをしました。それに対して社長は、こういいました。「あなたのいままでの実績を表彰したのであって、それを励みにこれからもがんばるかどうかは、あなたの自由です」と。この社長は、社員の業績という具体的な根拠を示して、それを認めたわけです。つまり、事実を伝え、その事実について労 ■った。決して全人格をほめたわけではないことを伝えたのです。そうすれば、承認を与えられた側に過大なプレッシャーを与えることを避けられます。いいえ。表彰制度を行っているある企太田 ないと、両者が上司と部下という地位の上下関係にある場合は、叱ることがハラスメントにつながりやすい。そもそも、「ほめる、叱る」は、上から目線の言葉ですよね。上司と部下という組織内での立場の違いは、人格的な上下関係ではありません。お互いを役職ではなく「さん」づけで呼び合ったり、敬語を使ったりするなど、特に上司の立場からは、部下の自尊感情を損ねないような言動が求められます。太田 は、自分が思っている「認知された期待」の大きさ、つまり自分がどれほど期待されているかについての認識です。それが大きいほど、期待を裏切れないという思いが強くなりその通りです。事実に基づくことをし承認欲求の呪縛が生じる要素の一つ―優秀な人をほめてはいけないということでしょうか。―叱る場合も同じですね。事実に基づいて、その問題点や改善点を指摘するという姿勢が大事だといわれます。成長するわけですが、逆にそれに押しつぶされて不幸になる面もある。どうすれば、承認欲求の呪縛を回避できますか。―承認欲求があるから、人はやる気になり、■■「承認欲求の呪縛」という不幸を避けるにはほめ方にも工夫が必要3エルダー

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