エルダー2022年10月号
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とに高齢社員の実際のニーズをふまえて柔軟に運用することができればモチベーションアップにつなげることができるでしょう。ただし、人事管理上は非常に煩雑な運用を求められるため、その点には留意が必要です。また、賃金処遇の設計に関しては、一般的な定年再雇用制度の枠組みをベースとするのであれば、定年前の給与から20%~30%程度引き下げたうえで、さらに短時間・短日数勤務を希望する場合には追加で賃金の減額を行う(フルタイムの賃金基準から時短分と日数減の分を控除する)方法が一般的でしょう。3①ニーズと処遇方法の工夫勤務地限定コースを設けるケース定年後の継続雇用に関して、オプションとして、いわゆる「勤務地限定コース」を幅広く適用するケースがあります。例えば現役時代は転居をともなう勤務地の変更(転勤)があることを前提とした働き方をしていた社員のなかには、定年再雇用後は家族のいる本拠地での勤務を希望し転勤を望まないというニーズが一定量あります。そうした社員のために、本人の選択により「勤務地を限定する」ことが可能な制度を設けることで、高齢社員の再雇用後のモチベーションアップにつなげることが可能です。なお、「再雇用後も引き続き転勤があってもかまわない」という高齢社員も当然いるでしょうから、勤務地限定コースを選択する高齢社員との間で処遇を分けておくかどうかについても検討が必要です。一般的には、定年再雇用後にベースとなる賃金(基本給部分)に対して、勤務地限定コースを適用することで10%~20%程度削減するようなケースが多いと思われますが、会社ごとの高齢社員活用方針によって、いろいろなアレンジも可能です(定年再雇用者は必ず勤務地限定コースとして再雇用し、そのことによる賃金減額は行わないとする仕組みも可能であり、勤務地限定を希望する高齢社員に対してさらに配慮した内容となる)。を免除できるコースを設けるケース例えば製造業であれば工場内での深夜2交替、3交代業務、建設・工事業であれば夜間の緊急呼出しおよび待機業務など、現場作業者が担当する業務のなかでも、身体的な負荷の高い業務が発生するケースがあります。これらの業務に関しては、加齢とともに担当することがむずかしくなっていったり、高齢社員のなかには「できるかぎり避けたい」と考える社員も少なくありません。この点、定年後の継続雇用に関して、オプションとして当該業務を行う体制から除外されるコースを申請できるケースがあります。急激に身体能力の低下をともなうことは少ないでしょうが、60歳を超えて以後も長く働けば働くほど、負荷の高い業務を担当することがむずかしくなることは想像に難くありません。当然、会社側としてもできるかぎりの配慮は行っていることと思われますが、当該配慮によってほかの社員の負担が増えることを鑑みると、制度的にそうした高負荷の業務を免除してもらえることで、高齢社員も気兼ねなく仕事をすることができますし、マネジメントを行う側も、そうした高齢社員が在籍していることを前提に仕事の割り振りを計画することが可能です。り賃金処遇面での差をつけておくことが望ましく、実際には先述の勤務地限定コースの場合と同様、定年再雇用後にベースとなる賃金(基本給部分)に対して10%~20%程度削減するようなケースが多いと思われます。ので、参考にしてください。なお、当該コースを選択した場合には、やは以上の内容について、図表3にて整理しますなお、定年後の継続雇用に関して、給与を引②交替勤務や緊急呼出しなど、負荷の高い業務高齢社員に関する特殊な働き方の4860歳到達時点すぐであれば、59歳時と比べて

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