エルダー2022年10月号
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在宅勤務導入にともなう通勤手当の減額について教えてほしい就業規則に基づき支給される通勤手当は、賃金となるため、就業規則を不利益に変更する場合は、高度の必要性と就業規則変更の合理性が認められなければなりません。ただし、就業規則の変更をともなうことなく、解釈の可能な範囲で実費支給とすることは、問題ないと考えられます。なお、在宅勤務中の通勤手当の変更については、対象者と協議して理解を得ることが望ましいでしょう。当社には他県から長時間の通勤をしている従業員が多数います。業務の効率化とコロナ禍の対応として在宅勤務を進めているのですが、通勤手当の取扱いに苦慮しています。原則として、通勤手当は就業規則の定めにしたがって、実費を全額支給していますが、在宅勤務となったときには全額の支給が不要ではないか、出社時のみを実費支給すれば足りるのではないかという意見があります。通勤手当の支給額を一方的に減額することは許されるのでしょうか。用により賃金がさらに減額されることに向けた激変緩和措置として使用者に有利な要素として考慮されています。ただし、役職定年前後の差異については、86%程度に抑えられており、役職定年後の減額幅が小さく、軽減された業務内容や責任の相違と比較して高額に設定されていることも重視されています。1まずは、通勤手当の法的な性質に触れてお定年後再雇用であることから、年功的性格の賃金体系を採用している企業は、賃金の差異に対する説明はしやすいといえますが、それだけではなく、①業務内容や②変更の範囲についても、差異があれば説明をできるようにしておくことは重要と考えられます。きたいと思います。会社と労働者の労働契約においては、労働者が労務を提供し、使用者はこれに対する対価として賃金を支払うという関係が認められます。労働基準法第11条は、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めており、「賃金」に該当する場合には、労働者にとって重要な権利と位置づけられています。したがって、通勤手当が、「賃金」に該当するか否かによって、変更が許容されるか否かの結論も左右されることになります。出張旅費や業務にともなう外出時に支給される交通費などがあります。これらの出張旅費や交通費は、「業務費」として「賃金」から除外されると考えられています。これらの費用は、その性質上、業務遂行にともない必然的に発生するものであり、本来的に事業遂行を行う会社が負担するべき費用であることから、労働者による労働の対償であるべき賃金とはその性質を異にするというのがその理由です。ず支払わなければならないという性質までは有しておらず、あくまでも会社が、労働契約または就業規則に基づき、労働者に対して支払うことを約束した場合に支払う義務が生じるものです。その意味では、結婚祝金や死亡弔慰金などと類似の性質を有しています。結婚祝金や死亡弔慰金は、「任意的恩恵的給付」などと呼ばれ、原則として「賃金」ではないところで、通勤手当と似ているものとして、通勤手当については、使用者が労働者に必Q2通勤手当の法的性質2022.1052A

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