エルダー2022年10月号
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社員教育の意義は大きい社員教育の意義としてよくあげられるのは、主に次の三つです。・業務に必要な知識やスキルの習得による労働生産性※1の向上・社員のモチベーションの維持・向上・環境変化への対応力の強化企業としては労働生産性の向上やモチベーションの維持・向上に関心を持つ傾向がありますが、多くの企業が費用をかけてまで実施するほど重要視しているかは疑問です。厚生労働省の「能力開発基本調査(令和3年度)」の企業調査をみても、OFF―JTまたは自己啓発支援の両方に支出した企業は19・7%の一方で、いずれにも支出しない企業は49・0%に上り、同調査のOFF―JTに支出した費用の労働者一人あたり年間平均額(図表)は1・2万円、自己啓発支援では0・3万円となんとも寂しい状況にあります。また、景況悪化によって最初に減らされるのが社員教育費といわれる通り、図表の一人あたり平均額でみると、2008年のリーマンショックや新型コロナウイルスの影響が色濃い時期には平均額が低下しています。一方、政府は労働生産性の向上と、環境変化対応の強化面から、社員教育の意義について重要視しています。内閣府が発行している『経済白書(年次経済財政報告)』(平成30年)の第2章第2節に「人生100年時代の人材育成」というパートを設けています。このなかで、企業における教育の効果として「平均的には一人あたり人的資本投資※2額1%の増加は、0・6%程度労働生産性を増加させる可能性が示唆される」と数値的に示すことで積極的に教育投資することへの有効性について説いています。また、技術革新という環境変化に対応していくために、技術革新をになうための情報処理・通信にたずさわるIT人材の育成、技術革新に代替されることが困難な能力獲得、リカレント(学び直し)教育の重要性について述べています。け、高齢者の就業確保とも関係の深い用語であるため、触れておきたいと思います。リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあとも継続的に学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことをさしています。大学等の教育機関への通学や通信講座なども含めた自己啓発による学び直しを行うことにより、従事している業務またはそれ以外の分野や最新の知識・スキルを習得していきます。これにより社内でのさらなる活躍や新たな仕事や職場への挑戦など、長い職業人生に対応しやすくなることが期待できます。高齢者雇用においては、高齢者の知識・スキルのアップデート不足や新たな業務に柔軟に対応できないといった点が課題としてあげられますが、リカレント教育はこれらの課題解決に有効な手段として注目されています。次回は、「終身雇用」について取り上げます。リカレント教育は最近メディア等でもみか令和3年度調査令和2年度調査令和元年度調査平成30年度調査平成29年度調査平成28年度調査平成27年度調査平成26年度調査平成25年度調査平成24年度調査平成23年度調査平成22年度調査平成21年度調査平成20年度調査55エルダー図表  OFFーJTに支出した費用の労働者一人あたり平均額1.71.72.52.51.31.3※1 労働生産性……労働者1人1時間あたりに生み出される付加価値※2 人的資本投資……人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限引き出すために投資をすること1.41.41.41.41.41.41.41.41.51.51.31.31.51.51.41.41.31.31.41.41.81.81.71.71.71.71.71.71.61.62.12.11.71.71.71.71.91.91.41.41.51.51.51.51.21.2 (万円)3.0労働者一人あたり平均値2.52.01.51.00.50.03年移動平均出典:「能力開発基本調査(令和3年度)」 厚生労働省■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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