エルダー2022年10月号
60/68

2022.1058食文化史研究家● 永山久夫日本人は、年を取っても若く見えるとか、“不老民族”などと呼ばれますが、世界トップクラスの長寿が、それを証明しています。日本人は、食による健康管理が上手なのです。ほかの国の人たちが、あまり食べないようなものまで、たくみに活用して、不老長寿や若返りに役に立てています。その一つが、ユニークな海藻の文化。日本人は、世界でも珍しいほど、海藻を日常的に食べる民族なのです。なにしろ、縄文時代の貝塚からも海藻が出土するほど古くから食用にされてきたのです。イノシシ肉入りのワカメスープなどにして楽しんでいたのではないでしょうか。ワカメは北海道から九州まで広く分布しており、利用しやすかったのです。ワカメのヌルヌルした成分に含まれているアルギン酸やフコイダンなどは、腸内でビフィズス菌など善玉菌の餌となって、その勢力を強化し、悪玉菌を追い払い、免疫力のパワーアップに役立っています。ワカメには、食物繊維が多く、特に健康効果などで脚光を浴びている水溶性の食物繊維がたっぷり含まれています。食物繊維によって腸内環境がよくなれば、新型コロナウイルスなどの感染症やガンの予防、そして若返りにも力を発揮するなど、さまざまな効果が期待できます。ホテルの朝食で和食コースを注文すると、たいてい出されるのが、豆腐とワカメのみそ汁。ワカメのみそ汁を食べると、一日をニコニコとなごやかに過ごせるからかもしれません。昔から「イライラするときには、ワカメのみそ汁」といわれてきました。ニコニコできる理由は、ワカメ、豆腐、みそ、カツオ節のどれにもカルシウムが含まれているからなのです。カルシウムは人の体にもっとも多く含まれているミネラルで、丈夫な骨をつくるだけでなく、精神安定効果も高いといわれています。一日のスタート前にワカメのみそ汁を食べることは、仕事の能率を上げるための日本人の知恵ともいえます。年を取っても若く見える日本人朝食にワカメのみそ汁の知恵348FOOD日本史にみる長寿食ワカメの若返り効果

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る