エルダー2022年10月号
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天然木の材料を見極めその特徴を活かす■■■■■■れている。彫刻を除き、その工程を一貫して手がけることのできる希少な職人が、岩田芳樹さん・晴芳さんの双子の兄弟である。2人は21歳のとき、創業者である父・芳■次■郎■氏に師事し、技術を習得した。2人とも、父の働く姿を見て育ったこともあり、自然と後を継ぐ気持ちになったそうだ。1976(昭和51)年に有限会社岩田仏壇製作所を設立。その後、生産量の増加にともない東京都北区から埼玉県川口市に工房を移転した。現在は晴芳さんの息子・隆■さんと3人で、仏壇の製作に従事している。3人とも東京都認定の伝統工芸士である。東京仏壇は、材料に黒■檀■、紫■檀■などの唐木 ※や桑、屋■久■杉■といった銘木を用いる。いずれも木目が美しく、特に唐木は硬いため、耐久性にも優れる。こうした木地の特性を活かすためには、豊富な経験が欠かせないという。まず、木材から部品となる木地を取る「木■取■り」では、木目を活かしたり、貴重な木材を無駄なく使うことが求められる。また、すべてを唐木などで製作すると、コストが高くなり、重量も住居の床が沈むほど重くなってしまう。そこで、部品となる材料には、芯材に別の天然木を使用し、薄く加工した唐木材をその表面に接着する加工が施される。すべてが天然木のため、それぞれの木材の性質を見極めて加工する力も必要だ。また、唐木は硬い材質のため、釘などは使わず、指物の技法を用いる点も、熟練した技能が求められる。「例えば、蝶■番■を使ったつり込みの扉は、寸法通りつくってもうまく閉まりません。蝶番によって生まれるすき間を考慮して調整する必要があります。また引出しは、片方を押し込むともう片方が押し銘■■木■■の材料を見極める力と指■■物■■・塗りなどの伝統技能を駆使して、 ■■■■■■2022.106221歳のときから二人三脚で技術を磨いてきた。現在は芳樹さんが北区伝統工芸保存会の会長、晴芳さんが東京唐木仏壇工業協同組合の理事長として、業界の発展にも力を注ぐ※ 唐木(からき・とうぼく): 黒檀や紫檀など、熱帯地方で生産される高級木材。奈良時代に唐(中国大陸)から日本へ渡ってきたことからこの名がついた。現在、黒檀、紫檀はワシントン条約で国際取引が制限されている。丈夫でありながら美しく温もりの感じられる仏壇を製作

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