エルダー2022年11月号
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ターへ滑車を取りつける実務を担当していた。通勤の負担を軽減するため、雨天の日は休日にするなど、生涯現役で働き続けられる仕組みとしており、熟練の高齢社員が働く姿はほかの社員たちのよい手本となっていたそうだ。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み同社は、年齢で給与を下げることはしていない。定年後も待遇などは一切変更せず、随時昇給も実施している。社員の給与は職種(営業、設計、工事〈施工〉、工場〈製造〉、事務の5種類)によって、採用時点の金額が設定されており、技術の習得や経験を積むことにより随時昇給していく。昇給のタイミングは、所属長などから報告される技術の習得状況や、貢献度合いに応じて社長が判断する。賞与や退職金の支給はないが、その分を考慮した月額給与を設定しており、定年後も同様である。同社のシャッター製造は独自開発した技術であり、同社にとって技能継承は最大の課題である。定年を迎えた社員には、雇用延長時に「若手へ技術を教えてほしい」と会社側の要望を伝えている。そのうえで技能継承が達せられた場合に昇給するシステムとなっている。以前は、「技能継承を行うと自分の存在価値がなくなるのでは」と危惧する高齢社員もいたが、昇給につながるシステムが整備されたことにより、技能継承がスムーズに行われるようになった。また、本人の希望があれば、業務に必要なスキル習得のための研修を会社負担で受講することができるほか、高齢社員向けのパソコン教室など、社内でも教育訓練を実施している。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み▼作業環境の改善最高年齢94歳(当時)の社員が、着席状態でほとんどの作業ができるように、着席時の視点に合わせて機械や作業台を設置。現在の最高年齢80歳の社員も、同じように着席状態で作業を行っている。また、設計・事務担当者などのデスクワーク業務が中心の社員については、長時間座っても負担の少ない椅子に変更した。あわせて、ゲルクッションも購入し、負担軽減に努めている。▼勤務形態の変更年齢にかかわりなく働き続けられる体制を整えているが、高齢社員自身から「加齢による体力面の衰えにより、従来の働き方では継続がむずかしい」と相談された場合は、作業環境の見直しに加え、勤務日数や時間を個別に変更するなど、その都度できるかぎり継続して勤務できるように配慮している。▼多能工化への取組み社員それぞれメインとなる職種があるが、4カ月に1度のペースで担当部署を入れ替え、社員の多能工化を図っている。このため、例えば営業と設計、工事と工場、事務と営業など、日常的に異なる職種の経験を積んでおり、繁忙期の人手確保や、勤務形態の見直しにより手薄になった部署への応援が可能となっている。▼健康管理員には、病院が比較的空いている平日を活用できるよう、有給休暇の取得を推奨している。▼安全衛生差はスロープに変更、階段には色つきの手すりを設置している。また、負担軽減のため、重い物を運ぶためのフォークリフトの導入や、工場内エレベーターの設置なども行っている。そのほか、駐車スペースを改装し、社員用の駐輪場スペースを確保した。駐輪場の床は、滑り止め材を通常の1・5倍配合した素材で塗装し、より滑らないように工夫している。健康維持のために、定期的な通院が必要な社労働災害の防止のため、工場などにあった段18高齢社員が座りながら作業できるよう、着席時の視点に合わせて機械を設置している株式会社 横引シャッター

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