エルダー2022年11月号
31/68

イドによる紳士服・婦人服の製造・販売事業を展開する企業である。創業の前身として立ち上げた工房では、当初はコロナ対策のための医療用ガウンの縫製・販売を行っていたが、同分野への大手企業の進出により方針を転換。社員数は少数ながら、高齢社員が持つたしかな縫製技術をもとにオーダーメイドによる紳士服・婦人服の縫製・販売に事業転換した。新規事業としてブライダル分野の開拓や、豊橋市のふるさと納税の返礼品(フルオーダースーツ)への出品などにも積極的に取り組んでいる。者は71歳である。高齢社員の縫製技術は高く、そのうち1人は、豊橋市の事業所に従事する卓越した技能者を表彰する「とよはしの匠」に認定されている。高齢社員の持つ縫製技術が、次世代に継承されずに失われてしまうことを危惧した創業者が、高い技術を持つ高齢人材を迎え入れ設立したのが同社である。現在は、60代・持つ50代の人材、見習い中の20代の人材が加わり事業を展開している。同社は高齢社員が持つ縫製に関する技術を核に紳士・婦人服のオーダーメイド事業を展開しているため、高齢社員により長く勤めてもらうことを強く願い、高齢社員が安心して仕事に従事する職場環境を整備・拡充するための取組みを進めている。(1)制度に関する改善▼定年なし、柔軟な勤務体制同社の雇用制度における主な特徴は、「定年の定めなし」と「柔軟な勤務体制」の2点である。「定年の定めなし」は、社員に高い意欲を持って働いてもらうために、創業当初から整備した。紳士・婦人注文服の職人の世界では、「70歳でも若手」といわれるほど高齢化が進んでおり、後継者も育っていない。衣料品の製造が海外生産にシフトして国内生産が急減し、伝統的な手仕事を受け継ぐ人材が激減しているのが現状である。しかし、既製服が合わない人や、よりよい服を必要とする人はいまだ数多く存在しており、注文服を縫製する技術は世の中で必要とされている。ではなく、細かな手作業(針仕事)であり、高齢であっても活力を持って働ける仕事であることから、創業時から定年年齢を定めなかった。これからも高齢社員の労働意欲を高めながら、気持ちよく活躍できる場の創出を目ざしていく方針だ。「柔軟な勤務体制」については、勤務時間は「8時30分~17時30分」としているが、フレックスタイム勤務も可能で、所定労働時間は週20時間以上40時間以内と柔軟性を持たせている。社員の体調管理を万全とし、残業をさせないため、1日の勤務時間については3時間以上8時間以内としている。なお、1カ月の実労働時間が所定内労働時間に満たなくても賃金の減額は行わない。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み▼技能継承の取組みの社員と20代の若手社員を後継者として、2人の高齢社員が持つ縫製技術の継承を図っている。各人が持つ技能を伝えながら、種々の題材の試作を楽しんで行うことで、新しい技術や細注文紳士・婦人服縫製は負荷の高い肉体労働今後も同社の事業が継続できるように、50代高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方改善の内容29会社外観70代の2人の高齢社員に、縫製職40年の経験をⅢⅢ社員数4人中、60歳以上は2人で、最高年齢ⅣⅣ

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る