エルダー2022年11月号
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ょうもあり、作業場にスタンド照明を合計6基増設し、天井照明の高さを下げる工夫を施した。また、空調に関しては、大型エアコンの設置に加え、空気の循環のために扇風機と温風ヒーターを3台ずつ追加配備。さらに、コロナ禍に対応するため空気清浄機、加湿器を設置し、換気や湿度管理を徹底している。▼作業姿勢の改善    うしミシン作業用の作業台を、立ち作業が負荷なくできる高さに調整し、座って作業する場合には作業する人に合わせ、見やすい高さとなる2種類のいすを各人に用意した。また、作業の効率を考慮して、匠の高齢社員がほかの3人に指導・監督しやすいように作業台を配置した。さらに、社員それぞれが作業しやすいよう、通路幅の調整なども行っている。▼通勤負荷の軽減同社は豊橋駅から3㎞ほど離れており、1時間に6本の市内循環バスが停まるバス停から約100mの位置にある。高齢社員の体力などをふまえて、自宅からバス停などの公共交通機関が不便な場合は、家族の自家用車での送り迎えによる通勤でも交通費を支給している。▼健康管理社員に体調不良が生じた場合は有給休暇を取得して随時対応しているほか、毎朝の作業開始時に健康確認を行っている。また、インフルエンザ予防接種やコロナワクチンの接種、副反応などで不調をきたした日も、特別有給休暇として対応している。日常の健康管理では、高齢社員にこまめな水分補給をうながすため、休憩室をより快適に過ごせるように整備するとともに、簡単な調理設備を追加した食事室も整えている。(4)そのほかの取組み同社では、社会・地域貢献のさまざまな活動を展開している。そのうちの一つが「縫製の普及活動」で、工房と地域の公民館を利用して、縫製に興味・関心を持っている人を対象に、服の仕立て直しや簡単な補修を学んでもらう縫製教室を開催している。講師は同社の高齢社員が担当し、機械化しにくい細やかな手縫いの技や、昔の人ならだれでも習得していた「お直し」の技術などを基礎から伝授している。また、縫製教室など普及活動への参加者のなかから同社への就職を希望する人もいる。経営状況などから残念ながら採用には至っていないが、同社のサポーター(職人)として登録してもらい、引き続き教室に通ってもらっている。今後、同社の事業が拡大し、経営業績が安定した際には登録しているサポーターの採用を視野に入れている。(5)高齢社員の声同社の事業を支える兵ひ藤ど義よ男おさん(72歳)は、高度な技能と経験を持つ文字通りの「匠」。採寸から型紙作成、仮縫い調整、中縫い調整、仕上げ確認、アイロン仕上げ、リメイクまですべての工程を熟知している。本人は「日々勉強です」と謙遜するが、ベストな状態で作業ができるよう、温度管理や照明確認、安全確保、過重労働の防止など、職場内のさまざまなところに気を配りながら、後継者の育成に努めている。(6)今後の課題齢社員の経験を活かし、時代に対応できる技術を磨き、誇りと目標を持って継続して働ける職場環境づくりを進めている同社。今後は、職人の育成を行って人材を増強し、「匠の技術」をさまざまな人材に継承できる体制の構築を目ざしていくという。縫製の「とよはしの匠」として顕彰された高31兵藤義男さん

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