エルダー2022年11月号
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理する会社として1992年に設立された。伊勢神宮・内宮の門前町には、「おはらい町」と呼ばれる宇治橋から五十鈴川に沿って続く通りがあり、伊勢らしい切き妻づ・妻つ入いり様式の商家などが軒を連ね、昔から多くの参拝者を迎えてきた。しかし、1970年代半ばころから自動車での参拝客が増えたことなどにより、おはらい町は活気を失いはじめる。そこで、かつてのにぎわいを取り戻そうと、この地で創業した老舗企業の株式会社赤福が町の活性化に向けて動き出し、地元市民の協力を得て、おはらい町の約4000坪の敷地に伊勢らしい伝統的な町並みを再現したのが「おかげ横丁」である。名称の通まりま り町の横丁にあり、自由に散策して風情や懐かしい雰囲気が味わえると評判を呼び、27店舗でスタートしてから少しずつ店舗数を増やし、56店舗(2022年10月1日現在)が営業している。伊勢福の直営店が31店舗、委託が16店舗、赤福の運営が9店舗である。1980年代のおはらい町通りの往来者は年間約20万人であったが、おかげ横丁の誕生後は徐々に往来者が増え、常ににぎやかな通りへと復活した。2019年のおかげ横丁の年間来客数は約592万人となっている。るが、他店舗のことがわからないなど横のつながりが希薄になっていたことから、働き方改革の一環として2016年に「おかげ横丁活性化委員会」を立ち上げた。活き活きした職場づくりが目的で、多様な部署から20~30代の若手が参加する意見交換から開始。そこから、職場懇談会、情報を共有する『おかげさま新聞』の発行や、仕事と育児に関する勉強会などが始められた。そうしたなか、社員の高齢化が進んでいたこと、30~40代の人材が少ないこと、事業を維持するための人員確保が困難になっていることが委員会の議題にのぼり、「定年年齢を引き上げてはどうか」という意見が出ていた。同じころ、経営会議においても同様の意見が出ており、協議を重ね、定年年齢に近い社員の意見も聞きながら検討した結果、それまで60歳としていた定年年齢を65歳に引き上げることとし、2019年に制度を改定した。(1)制度に関する改善▼高齢者雇用制度の改定を活かして長く働ける職場とするため、2019年に定年年齢を60歳から65歳に引き上げた。しかし、間近に定年を控えていた社員に配慮し、改定時から5年間は経過措置として60歳から64歳到達時までの年齢についても定年退職を可能としている。働くことができるように、一定の基準のもと70歳まで再雇用し、70歳以降も本人の意向、健康状態、勤務状況などをふまえて再雇用することとした。ただ、年齢を重ねると身体の状態に変化が生じやすくなることなどから、意欲のある人が長く働ける職場を目ざして、65歳以降はそれまで1年間であった契約期間を半年間に改定し、勤務日数や勤務時間について希望を反映しやすい制度にした。人材不足への対応と、蓄積された技術や経験定年後についても意欲のある社員が安心して企業の沿革・事業内容高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方改善の内容33おかげ横丁の街並みⅢⅢ幅広い年齢層の社員がおかげ横丁で働いていⅡⅡ株式会社伊勢福は、「おかげ横丁」を運営・管ⅣⅣ

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