エルダー2022年11月号
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第5回45エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。高齢社員が習得してきたノウハウは会社にとって貴重な財産です。ノウハウを持つ高齢社員が後継者に直接伝える、また、社内全体で利用可能とするためにマニュアルや動画にして「見える化」することが必要です。ところがむずかしい場合もあります。そもそもすべての高齢社員が優れた教え手とはかぎりません。話すのが苦手な人はその強みを伝えられません。マニュアルや動画を残そうにも本人は文章を書くのが苦手で、パソコンやタブレットなどを使いこなせないこともあるでしょう。そのような場合、後継者となる若手社員や中堅社員が高齢社員のノウハウを聞き出し、記録し、マニュアルやテキストを編集する方法があります。その編集をしながら仕事を覚えることもできます。高齢社員には仕事の内容やそれを行う理由、「コツ」を語ってもらい、ふだんの作業を行ってもらいます。若手社員が記録係になれば、自分が知りたいことを盛り込めるだけではなく、若手社員が理解しやすいポイントを押さえたマニュアルづくりが可能です。仕事の流れや何が重要かを知る中堅社員も協力し、経験の浅い若手社員が見逃しがちなノウハウももれなく収集します。後継者育成が重要と考える高齢社員でも、技能伝承の役割が未経験であれば不安も大きく、拒否反応を示すかもしれません。むしろ、「仕事をやってみせる」、「コツを話してもらう」など、比較的簡単にできるところからお願いし、次第に高度な部分(機材操作やパソコンでの文書作成)も担当できるよう(ただし性急さを求めず)、周囲が支援していくのがよいでしょう。なお、高齢社員が活き活きと技能伝承や後継者育成に励める環境づくりも心がけたいものです。例えば、技能伝承に努める高齢社員には正当な評価を与えて金銭面で処遇するだけではなく、肩書きや称号も付与します。ある会社では高齢社員が自身の名前を冠した塾(例えば内田塾)の塾頭として、各地の支店を巡回して教えています。プロフィール解 説解 説解 説解 説マンガマンガでで学ぶ学ぶ高齢者雇用高齢者雇用集中連載集中連載高齢社員が若手の育成をしてくれません 豊富な知識や経験、高い技能を持つ高齢社員に、若手・中堅社員への「技能伝承」や「後継者育成」の役割を期待している会社も多いのではないでしょうか。ところが、いざ高齢社員にその役割をお願いしても、今回のマンガのように「人に教えることに慣れていない」などと、抵抗感を示されてしまうこともあるようです。高齢社員に技能伝承・後継者育成をになってもらう際のポイントについて、東京学芸大学の内田賢教授にうかがいました。内田教授に聞く高齢者雇用のポイント若手社員・中堅社員の強みを活かして行う技能伝承指導役の高齢社員のモチベーションアップも重要なポイント教えてエルダ先生!こんなときどうする?

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