エルダー2022年11月号
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 3■■歯周病はさまざまな病気の引きがねにブラッシングとフッ素で歯周病とむし歯を予防頭が固定できずフラフラしやすくなります。実際に総入れ歯の人の義歯を外し、体の重心を調べるとフラフラしています。下顎が不安定になると体の重心も不安定になり、体のバランスを崩して転倒しやすくなるのです。筋力が強い若者であればバランスを崩してもふんばれますが、高齢者は筋力が低下しているので、ふんばれずに転びやすいのです。山本 失われた歯の8割以上は「歯周病」と「う蝕■(むし歯)」が原因です。歯周病の直接の原因は細菌のかたまりである歯垢。歯周病菌は空気が嫌いなので歯と歯茎の間の歯周ポケットに入り込んで歯垢ができます。歯周病菌は血液が大好きで、血液中の鉄分を養分にして育ち、毒素を出すことで歯茎が腫れる「歯肉炎」になります。悪化すると歯茎から膿が出て、歯を支える骨が溶け出し、しまいには歯がぐらついて抜けてしまいます。歯周病はほかの疾患に影響することもわかっています。歯茎の腫れがひどくなると体が反応し、白血球が活性酸素を出して菌を退治しようとしますが、活性酸素が過剰になると、体をめぐっていろいろな病気を引き起こす可能性があります。脳では認知症の引きがねになり、肝臓では脂肪肝が発生しやすくなります。また、歯周病菌は血液を固める力があり、血栓の原因となり、動脈硬化によって心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。一方、糖尿病になると血管も弱くなるので、歯茎の血管も弱くなり歯周病リスクが高まることなどもわかっています。歯菌が砂糖などの糖分を利用して酸をつくり出すことで、歯の成分であるカルシウムやリンが唾液のなかに溶けて、そこに穴が空くのがむし歯です。山本 は、とにかく歯周病菌を増やさないようにすること。歯と歯の間の歯垢を取り除くブラッシングが基本で、いまのところこれを超える予防法はありません。多くの人は歯の表面を磨きますが、そうではなく歯と歯の間に爪楊枝のように歯ブラシをあてて縦に動かすのです。また適度に歯茎に機械的な刺激を与えてください。歯茎が病気だと血が出ますが、しっかり磨くとよくなります。私たちの研究では、歯茎の細胞は、刺激することで新しい細胞に入れ替わるスピードがおよそ2倍ほど早くなそして、むし歯も歯を失う原因です。むしまずは、歯周病の予防です。重要なの―歯を失う原因とは何でしょうかんな予防をすればよいでしょうか。―歯を失うリスクはよくわかりました。どエルダー

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