エルダー2022年11月号
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いまの評価だけにとらわれるのではなく、シニアとしての今後の働き方を考えるなかで、自身の強み、自身の仕事に対するとらえ方・価値観、自身のやる気の源泉はどういうところにあるのか、といった幅広い観点での自己理解を目ざします。研修効果を高めるための施策として、いわゆる多面評価(360度評価ともいう)も取り入れています(図表2)。上司、部下・後輩、同僚、それぞれの視点で自身に対する評価を客観的に実施してもらうことで、1人では気づけない観点を得ることにもつながりました。(2)期待役割明確化(「マスト=期待事項検討」フェーズ)会社が抱える課題に対して、短期視点ではなく中長期視点で必要な事項に至るまで、できるだけ多くの観点を抽出します。研修のなかではタブーをなくして、会社に対するネガティブな感情もできるだけ吐き出させるなかで、リアルな課題感を共有できるようにすることが大切です。いままでの仕事のやり方を変え、新たに自身に求められること、自身にできることは何かについて、じっくり時間をかけて検討します。いま現在の会社の業績アップに向けてできることもあれば、いますぐには業績につながらないが中長期的に考えていまやっておかなければ後々問題になるであろう事項について、自身のキャリアだからこそ貢献できる事項を探す、という観点も重要になります。相互に話し合うなかで、高齢社員として会社に期待される役割を整理することにつながりました(図表3)。(3)研修成果のまとめベーション向上を実現することができました。役割・職責の急激な変更を受けて、今後のキャリアイメージが持てず「目標喪失」の状態にあった社員もいましたが、研修のなかで、・大切にしていきたい価値観・成功体験に基づく有用な強み・上司を始めとした周囲からの期待を深く掘り下げて検討・確認したことにより、今後の目標を具体的に見出すことにつながりました。にともなう成功例がどんどん増えてきています。例えば、技能伝承を目的とした高齢社員による社内勉強会は若手社員を中心に非常に好評であり、人材育成の活性化につながるモデルケースとなっているようです。そうした検討を自身で、またチームメンバーA社では、研修を通じて高齢社員層のモチ研修後は、高齢社員層のマインドセット変革②組織・上司の期待をもとに、自身のこれか③年齢を理由に自己啓発を怠るのではなく、環らの役割を具体的に検討することで目標を見出す境変化に適応するためのスキル獲得のモチベーションを向上させるといったことを通じてマインドセットの改善を図り、組織全体の生産性を向上させることを主目的としています。さて、A社ではこの研修の受講対象者を55歳以上の社員(役職定年者を含む、役割・職責の大幅な変更が行われた社員)とし、1チーム5~6人程度の小チームを編成しました。研修を通じて自身のことを改めて理解することはもちろんのこと、同じ境遇である同年代の者同士が相互理解を深めることにより、研修成果を高めていくことがねらいです。具体的な研修カリキュラムと同社で得られた成果について、いくつかポイントを確認しておくことにしましょう。(1)自己理解(「バリュー=価値観言語化」フェーズおよび「ストレングス=強み探索」フェーズ)このフェーズでは、現在の仕事状況にも触れつつ、自身の仕事人生をポジティブにとらえ直す(強みの再認識)ことを目的とします。54 

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