エルダー2022年11月号
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(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)歯周病は労働生産性にも影響を及ぼす定期的な歯科検診の推進をることがわかりました。次にむし歯の予防です。むし歯予防には歯   出したカルシウムやリンなどの歯の成分をす磨きしかないと思っている人が多いのですが、実は、世界の多くの研究では、歯ブラシで磨いてもむし歯を予防する効果は確認されていません。ただし、フッ素入り歯磨き粉を使うことで、むし歯を予防する効果があることがわかっています。フッ素は、唾液に溶けばやく歯に戻す作用があります。したがって、むし歯を予防するにはフッ素入りの歯磨き粉を使うこと。そして特におすすめしたいのが、うがいは1回でやめること。何度もうがいをするとフッ素が流れてしまうからです。また、寝ている間に唾液の分泌が減り、口のなかは細菌が増えているので、朝起きてすぐに歯を磨くこともおすすめです。山本 外出時に手軽にできる方法はありませんが、帰宅してから手入れをすれば大丈夫です。たいへん効果があるとされている予防法が、フッ素でうがいをすることです。これだけでフッ素入り歯磨き粉より2倍以上のむし歯予防効果があります。私も1日1回、夜寝る前にフッ素入りうがい薬を1分程度口に含んでブクブクすることを30年以上やっていますが、効果は絶大です。歯周病予防はブラッシング、むし歯予防にはフッ素を使う。この二つで高い効果が期待できます。山本 力の欠如や労働時間の損失など、生産性に影響することがわかっています。歯周病がある人とそうでない人ではプレゼンティズム(出勤しているにもかかわらず、心身の健康上の問題により仕事に対する集中力がそがれ、パフォーマンスが落ちている状態)のリスクが2・01倍高いことも判明しています。また、職種別の歯周病の発症リスクは、専門的・技術的職種を1とすると、生産工程・労務職は最近の研究では、歯周病が進むと集中2・52倍、運輸・通信業従事者は2・74倍高くなります。さらに、残業時間が多い人ほどむし歯が多いという調査結果もあります。えています。社員の歯の健康を守り、生産性を高めるためにも、企業は社員にぜひかかりつけの歯科を持たせ、年に1〜2回、定期的に歯のチェックに行くよううながしてほしい。また、私たちは定期健康診断に歯科検診を導入する仕組みをつくり、企業で実践していますが、評判もよく、実際に医療費も下がるという効果も出ています。できれば定期健診に歯科を入れてほしいですね。歯の本数は、を過ぎると平均で20本を下回ります。高齢になっても20本以上を維持すれば、元気に働き続けることができますし、リタイア後の認知症のリスクを下げ、人生を謳歌できる可能性が高くなります。近年は「健康経営®」を重視する企業も増―ただ磨くのではなく、フッ素が有効ということですね。仕事など昼間の外出時に手軽にできる予防法はありますか。―先生は歯の疾患が労働生産性にも影響すると指摘されていますね。歯の健康について、企業としてできる対策はありますか。2022.114神奈川歯科大学 教学部長 歯学部教授(健康科学講座 社会歯科学分野)山本龍生さん60歳までは平均で20本以上ありますが、70歳

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