エルダー2022年11月号
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理由があるとはいえない」と判断されました。結論としては、定年後再雇用時に定めた労働条件と同一の内容で再雇用契約が成立したものとみなされて、雇止めを実施したときから判決時点までの賃金(バックペイ)とそれに対する遅延損害金の支払が命じられました。従前紹介した事案との相違点は、労働条件の変更が個別の労働者個人の問題であったか定年後再雇用者全体の問題であったか(この違いが個別の労働者にとっての従前と同一の労働条件による更新の期待に相違を生じさせた)、労働条件の変更理由に対して合理的な理由がありそのことをていねいに説明していたかという点があげられます。まって、更新に対する期待可能性が肯定されやすく、労働条件の変更についても、同一労働条件が維持されることを前提に不利益な変更に対する自由な意思による同意の獲得を目ざした対応が求められるという点に留意する必要があります。1固れていないことが多く、これが無効となってしまったときのリスクも正しく認識されていないように感じています。どれだけ時間外労働、休日労働、深夜労働をしたとしても、「固定額以上の金額を支払わなくてよい」と理解している例です。固定額で働かせ放題になるという賃金体系を労働基準法は許容していません。また、固定残業代が無効とされた場合には、①過去の割増賃金の既払い分への充当が否定される、②割増賃金の基礎となる賃金に固定残業代相当額が付加される、③付加金の支払を命じられる可能性がある、といったリスクがあります。されているのが固定残業代です。前払いしている割増賃金が労働基準法が定める割増賃金の最低基準額を超えているかぎりで労働基準法に違反するものではないとされています。したがって、固定額で時間外労働などをさせ続けることができるわけではなく、固定額が時間外労働などで支払うべき割増賃金を超えないかぎりで許容されるにすぎず、超過した場合には、超過部分を支払う義務は消滅しないということになります。定残業代については、正確な理解がなさよくある間違いとしては、固定残業代は、判例上、一定の要件を基にかろうじて許容Q2営業職を募集する際に、求人サイトには固定残業代として36時間分の外勤手当を支給する旨を明示して、採用しました。採用後も、外勤手当が固定残業代であることは定期面談の際に説明をしています。採用後に固定残業代を超えて働くことがほとんどなかったので、残業代を支給してこなかったのですが、退職後に、固定残業代は有効ではないと主張して、在籍中の割増賃金を請求されてしまいました。請求に応じて全額を支払わなければならないのでしょうか。固定残業代が有効となる場合、有効とならない場合について教えてほしい固定残業代の法的性質固定残業代が有効と判断されるか否かは、就業規則や雇用契約の規定が重要ですが、規定がない場合であっても、明確に区分することができていれば、固定残業代として有効と判断される可能性があります。ただし、36時間という時間外労働と大きな乖離がある場合には有効と判断されないおそれがあります。2022.115865歳までの継続雇用が義務であることと相60歳以降の再雇用契約の更新については、A

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