エルダー2022年12月号
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食文化史研究家●永山久夫27エルダーFOOD349鯛は、赤い長寿の魚です。鯛といったら、一般的には真鯛のことで、いまでも「海魚の殿さま」と称賛されるのも、姿、色、味の三拍子が整っているからにほかなりません。あの美しい鮮紅色を醸し出しているのは、餌としてエビを好むからで、エビの色素物質であるアスタキサンチンが、体内で濃縮されているためです。アスタキサンチンは、ニンジンなどの色素成分であるカロテンと同じ抗酸化成分で、体の老化を防ぐ長寿物質です。しかし、その抗老化作用は、カロテン以上であることが判明しています。「おめでたい44」にあやかって、お祝いの席に鯛は欠かせません。赤い色、姿に加えて長寿効果があるためで、七福神のえびすさまも、大きな鯛を抱えて、ニコニコしています。鯛は高タンパク質で、代表的な白身魚。鯛は最近では養殖物が多く、市場に出回っている真鯛の場合、80%近くが人工飼育のものだそうです。タンパク質の含有量は、あまり変わりませんが、養殖物の方が、脂質もビタミン類も多いそうです。鯛には、うま味成分のイノシン酸やグルタミン酸など、各種のアミノ酸がバランスよく含まれており、血圧を安定させる働きもあります。心臓や血管を丈夫にしたり、脳の機能向上と関係のあるタウリンも豊富です。鯛の脂質には、必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)も多く含まれており、記憶力アップや、血液サラサラ効果でも注目されています。さらに、ウイルス感染を防ぐといわれるミネラルの亜鉛、それにビタミンDも含まれており、免疫力の向上にも役立ちそうです。おいしいのが鯛茶漬け。鯛の切り身を、ひと口大のそぎ切りにして、醤油、みりん、生卵、すりゴマ少々のたれ汁にひたし、ご飯の上にのせ、熱々のだし汁、または熱湯をかけ、すりワサビを添えてかっこみ食い。いやー、とっても美味なんです。鯛のアスタキサンチン天下一品の鯛茶漬けやっぱり鯛■■ですよ日本史にみる長寿食

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