エルダー2022年12月号
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今回のテーマは「介護」ですが、高齢社員はさまざまな事情で仕事を続けることがむずかしくなることがあります。健康を害する、体力や意欲が低下するといった本人の事情もあれば、介護以外でも孫の世話や自治会などの地域活動を期待され、本人に働く意思や能力があっても仕事を断念せざるを得ないこともあるのです。突然の退職は会社の想定を変えてしまいます。定年までに、または定年後の継続雇用の間に後継者を育ててもらう、顧客を引き継いでもらうといった計画が頓挫しかねません。退職を余儀なくされる高齢社員も無念さと申し訳なさに悩むでしょう。これでは高齢社員にも会社にも損失です。そこで「辞めなくても働き続けることができる」方法を用意します。通院や介護と仕事を両立できるように短時間勤務や在宅勤務、休暇の有効活用、担当職務の変更で工夫します。介護休暇や介護休業をはじめ、いくつかの実例はマンガでご紹介した通りです。問題を抱える高齢社員は「どうしたらよいか」と一人で悩み、切羽詰まってから会社に相談するのではないでしょうか。高齢社員と日常からコミュニケーションを深め、プライバシーに配慮しながらも個人的事情の把握に努めましょう。「みなさんが困ったとき、会社にはこんな制度があります」と日ごろから周知することが安心感を生みます。定期健康診断の要再検査者には必ず再検査を受けさせることも大事な取組みです。社内規程にない運用で解決を図る場合、その前例をノウハウとしてこれからの制度整備に活かします。一方、ほかの高齢社員はもちろん、若手でも将来は起こりうることですので、職場の同僚が理解し助け合う風土づくりも進めます。退職しても病気や介護から復帰すれば復職できる制度を持つ会社もあります。社員を大事にし、強みを持つ高齢社員にはいつまでも働いてもらいたいという会社の姿勢が表われています。33エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。プロフィール最終回高齢社員とのコミュニケーションを深め事情の把握に努めるとともに“辞めなくても働き続けることができる”仕組みの整備を高齢社員が介護を理由に「辞めたい」といっています教えてエルダ先生!こんなときどうする?解 説解 説解 説解 説マンガマンガでで学ぶ学ぶ高齢者雇用高齢者雇用集中連載集中連載 高齢社員は、若手や中堅世代と比べて、自身や家庭で抱える事情が多様化していくといわれています。今回のマンガでは、家族の介護に悩む高齢社員をご紹介しましたが、自身が病気を患い治療を続けながら働くケースや、家庭内における役割が変わることで、仕事に影響が出てくるケースもあるでしょう。こうしたさまざまな事情を抱える高齢社員に仕事を続けてもらうためのポイントについて、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。内田教授に聞く高齢者雇用のポイント

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