エルダー2022年12月号
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うことは、年齢による一律の制限ではなく、具体的な危険性を基にしたものとして有効となる可能性があると考えられます。ただし、自動車事故歴や薬の服用歴は、個人情報(薬の服用歴は要配慮個人情報)に該1業務命令および懲戒権を実行するためには、労働契約および就業規則に根拠を求める当するため、社員に対して業務上の必要性を説明して、利用目的を通知したうえで(薬の服用歴は本人の同意を得て)取得して、利用することが適切です。ことが一般的です。しかしながら、「社内における飲食を禁止する」といった個別具体的な禁止規定を服務規律に定めていない場合も多いのではないでしょうか。それでは、個別具体的な禁止規定がなければ、業務命令や懲戒権の行使はまったくできないのでしょうか。例えば、厚生労働省のモデル就業規則には「その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと」などの抽象的な服務規律規定が定められていますが、このような規定を根拠として、今回のような行為を業務命令や懲戒権行使の対象とすることはできないのでしょうか。律や企業秩序の維持、会社に帰属する施設管理の権限が懲戒権の根拠となることを複数の事件で肯定しています。企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して企業秩序遵守義務その他の義務を負う」と判示し、労働契約の付随義務としての企業秩序遵守義務を肯定している事件(最高裁昭和業の施設管理に関して「職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的な規則をもって定め、又は具体的に指示、命令すること」ができ、これに違反する者がある場合には制裁として懲戒処分を行うことができる旨を判示している事件(最高裁昭和54年10月30日判決。国鉄札幌運転区事件)もあります。これまでの最高裁判例においても、服務規例えば、「労働者は、労働契約を締結してしたがって、これらの判例における判断を飲食でデスク周りを汚してしまう社員に困っています当社では社内での飲食を特に禁止していないのですが、ある社員の食べ方が汚く、ゴミや食べかすが常にデスク周りに散乱してしまっています。当該社員に対してのみ、業務命令として飲食を禁止することは可能でしょうか。また、命令に従わない場合の懲戒処分は可能でしょうか。当該社員の飲食により執務環境が害されることを根拠として、企業秩序の維持および施設管理権の行使として、業務命令および当該命令に違反に対する懲戒処分を行うことは可能と考えられます。また、当該社員のみを対象とすることについては、ほかの社員との公平性の観点から問題となりえますが、デスク周りの汚損の状況をふまえたうえで、汚損などの状況が顕著であれば、企業秩序の維持および施設管理の観点から合理性があると認められ、懲戒権の濫用とはならないと考えられます。Q2業務命令および懲戒権の根拠について52年12月13日判決。富士重工業事件)や、企2022.1248A

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