エルダー2022年12月号
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■■■■安■保■雅博・中山恭秀 著/大和書房/■■■ストーリーで学ぶ安全マネジメント高齢ドライバーの意識革命ある安全担当者の苦悩と成長社内で安全管理業務を担当しながら、長年にわたり業界の垣根を越えた安全活動に尽力している著者は、多様な産業からメンバーが集まる異業種交流安全研究会の幹事として、専門家と現場をつなぐ活動をしている。異業種交流安全研究会では、事故を防止するための技術について実例を交えて伝える書籍などを著しており、本書はそれらに続くものだが、「ひとつの物語を読むことで、安全マネジメントを身近に感じてもらえたら」という著者の思いをかたちにしたストーリー仕立てになっている。主人公は、発電所に勤務する安田専一。運転課で技術を磨いてきたが、ある日、安全推進課に異動となる。いったい何からどう始めたらよいのか、苦悩の日々が始まる…。安全マネジメント、レジリエンスエンジニアリング、セーフティⅡ、コミュニケーションとチームなど、さまざまな産業における取組みや発生したトラブルからヒントを得て、そこからの学びと著者自身の経験も盛り込まれ、安全担当者・安田専一の成長ストーリーとして描かれている。安田に共感し、出来事を身近に感じながら、実務の基礎が理解できる。安全管理にたずさわる人々にとって大いに役立つことだろう。安全ゆとり運転で事故防止高齢ドライバーによる交通事故のニュースが目立つなか、運転免許を自主返納する高齢者が増えている。一方で、交通空白地域をはじめとして、生活のためには車の運転が必要という高齢者も少なくない。そうした状況に対応して、都道府県警察などが高齢ドライバーにすすめている「補償運転」をご存じだろうか。加齢により心身の機能が低下して、運転技能が衰えるのを補償するような、より安全な運転方法のことだが、「補償」という表現がわかりにくいとされ、本書の著者は「安全ゆとり運転」と呼んでいる。本書は、長年、警察庁科学警察研究所で交通安全の研究に励み、日本交通心理学会会長を務めた著者が、高齢者が安全運転を続けるための方策として、「安全ゆとり運転」の理論的背景と具体的な運転方法を説く。夜間や雨の日の運転を控える、以前よりスピードを出さない、安全に走行するルートを選ぶ、安全運転をサポートする車を運転するなど、安全ゆとり運転の20項目について、その必要性と実行するための工夫などをわかりやすく解説し、アドバイスする。運転業務に就く高齢者や車通勤の高齢社員が多い事業所の管理監督者に一読をおすすめしたい。脈■狭■窄■、喫煙、運動不足、過度の飲酒などがあ要支援、要介護になる主な要因として、「骨折、脳卒中、認知症」があげられている。本書は、これらを予防するための、無理なく気軽にできる運動や、脳の認知機能のアップ、血管と血流をケアする食事の心がけなどを伝授する。脳卒中には発症させやすい危険因子があり、それは修正できない危険因子と修正できる危険因子に分けられ、後者には高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、心疾患、肥満、頸■動■るという。修正できない危険因子はいかんともしがたいものだが、修正できる危険因子はコントロールしていきたい。有効な方法は運動で、脇汗をかく程度のウォーキングなどがよいそうだ。それにより、血流がよくなり、筋力もつき、運動量を増やせば持久力もつく。健康のためには「1日1万歩」とよく聞くが、後の研究などにより、たとえば2000歩で寝たきりを、7000歩でがん、動脈硬化、骨折などを予防できるといわれているそうだ。歩くことは、認知症予防にも効果的だという。こうした情報が満載で、「(それらを始めるのは)早いに越したことはなく、50代になったら開始したいところ」とは著者の言。榎本敬二 著/海文堂出版/1650円松浦常夫 著/福村出版/2640円880円5715万人診た高齢者医療の名医が教えるエルダー70歳すぎても歩ける体になる!実例をもとにしたストーリーから安全マネジメントが自然と学べる加齢などにともなう運転技能の低下を補う運転方法がよくわかる一冊最後まで人生を楽しむための運動や認知症予防、食事方法を伝授

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