エルダー2022年12月号
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和竿の品質を左右する竹良質な材料を自ら探し歩くもとにつくられたのが始まりだそうだ。「1960年代ごろまでは、和竿づくりは、いまのIT産業に匹敵するくらいの花形産業でした」と早坂さん。しかし、その後カーボンファイバーなどの軽くて強い新素材が登場し、和竿はすっかり下火になってしまう。そのようななかで竿師となった早坂さんが手がける和竿は、カーボン竿に比べて高価であるにもかかわらず、「長く使える」、「体が疲れない」、「ばらし※が少ない」、「釣りが楽しい」など、釣り人たちの間で高い支持を得てきた。その卓越した技能が評価され、2015(平成27)年度「横浜マイスター」に選定された。横浜で育った早坂さんは、子どものころから釣りが好きで、見よう見まねで竿づくりも行っていた。大学受験に失敗して進路に迷っていたころ、竿づくりの道具を買いにたまたま入った釣具店で、竿づくりの師匠となる人物と出会い、竿師を目ざすことを決意。師匠が常務を務める釣具店に就職して竿づくりの修業に励み、26歳のときに和竿師として独立した。早坂さんは、よく釣れて長持ちする竿づくりのために、年中自ら試作した竿を持って釣りに出かけ、釣れるかどうかを試して改良を重ね、釣り人に喜ばれる竿をつくり上げてきた。「ここまでやってこられたのは、釣りが好きだったからこそ。自分がお客さん以上に釣りをして、答えを出してきました」早坂さんによれば、和竿の魅力は材料である竹の性質にある。それだけに、竿づくりでもっとも重要なのは竹の選定だという。「反発力の強いカーボンに比べて、竹は引っ張られて曲がると、※ ばらし……針にかかった魚が外れて、逃げてしまうこと自ら選定した竹を自然乾燥させた後、まっすぐに矯正するための火入れを行う。柔らかくなったタイミングを見計らい、絶妙の力加減でまっすぐにしていく62よく釣れて長持ちする和竿づくりは、良質な材料を見抜く力、熟練の職人技、そして自ら釣りで試し改良する探究心に支えられている

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