エルダー2023年1月号
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高齢社員を含む多様な人材が活躍できる環境・制度づくりに向けて大木 少し視点を変えて質問をしたいと思います。高齢社員を含む多様な人材活用、そして多様な働き方が求められる時代となりました。こうした状況のなかで人事部に求められる役割・課題とはどのようなものでしょうか。渡辺 必ずしも高齢社員にかぎったことではないのですが、仕事が評価されている高齢社員がいる一方で、そうでない社員も少なからずいらっしゃいます。そういった社員を会社としてどう指導していくのか。その社員に仕事をどう気持ちよくやってもらい、役に立ってもらうのかがこれからの課題だと思っています。高齢社員を含む多様な社員が活躍するた森田 めの、働く環境・制度の整備・運用がとてもむずかしいと感じています。公平性を持った制度・運用になるよう、人事として気をつけて、多様な人材をどうやって評価し、働いてもらう環境を提供するかが今後の課題と感じています。喜多 当社の再雇用制度は、もともと希望すればだれでも雇用を継続できる仕組みでしたが、2020年に再雇用の基準を設けることにしました。そこで人事からは、全社員に対して、雇貢献意欲が高まるような形の施策を一緒に組み込んでいくことが重要それでは最後に、これから70歳雇用に取どこの会社でも同じだと思いますが、社ください。渡辺 高齢者雇用を推進することで、「長く安心して働ける会社なんだ」というメッセージが、若手社員にも確実に届いています。また、若手社員が高齢社員に同行してお客さま訪問を行うことで、お客さまとのコミュニケーションのとり方を学ぶことができます。そのような場面で、若手社員が得ているものは多いと思います。また、高齢社員は直属の上司とは立場が異なりますので、人生の先輩として相談役にもなってくれています。そういったよい影響を感じています。森田 当社では毎年働きがい調査を全社員に実施しているのですが、年代別に見てみると、定年延長を行った前後で、50代以上の「働きがい」が大幅に上がり、モチベーションが向上したことが大きな影響として表れました。「実力主義を貫く」というメッセージを発信したうえでの定年延長でしたので、60歳未満の社員のモチベーションが向上したのはよかったと思います。喜多 渡辺さんのお話にもありましたが、長く働くことの大切さや、そういう取組みに注力している会社であるということを、若いうちから理解できるというのはとてもポジティブに作用していると思います。用延長するタイミングではテストや人事考課チェックをすることを伝えています。そうすることによって、特に中堅から50歳ぐらいの社員が、自身の定年が見えてきたときに、「だれでも70歳まで働けるんだな」ではなく、「準備をしておかないと働き続けることができない」と思ってもらえることには大きな意味があると思います。その結果、日々の業務にもプラスになりましたし、再雇用に向けてがんばろうと働いている社員を見ていてそれは感じます。「だれでも無条件で再雇用するわけではない」と開示して全社員に理解してもらうことも、人事の大切な役割だと思います。大木 り組む企業へのアドバイスをお願いします。渡辺 員のなかには、期待値に沿った働きをしてくれる社員もいれば、そうではない社員もいます。特に高齢社員の場合は現役世代のときよりもモチベーションに差が出てきてしまうことが、当社でも課題となりました。一度下がったモチベーションを上げるのはなかなかむずかしいので、早い段階からモチベーションを維持・向上14

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